新たな女流棋士、そして産休制度
――それから十数年が経ちます。ご自身が手掛けていた中井塾からは、渡部愛女流三段や和田あき女流初段といった女流棋士も誕生しました
中井 中井塾に関してはLPSA(日本女子プロ将棋協会)のプロ資格を確立するための研修の場を設ける意味合いで、技術的なことと礼儀作法、あるいは記録の取り方など、一通りプロになるためのことを教えました。1年間通ってもらって、愛ちゃんもあきちゃんも、どこに出しても恥ずかしくない存在になったのかなと思います。
その後、愛ちゃんに関しては色々なごたごたに巻き込んでしまって、申し訳なかったですが、今の女流棋界を引っ張っているのが里見さんをはじめとする奨励会経験者なので、愛ちゃんのように奨励会を経験していなくてもとアピールできる存在は大事だと思います。あとは女流棋界の制度についても再考しなければならないのではと思います。女性初の四段誕生も現実味を帯びてきましたし、新たな局面に入ったのではないでしょうか。
――制度、という意味では、女流棋士にとっては産休というのも大きいのではないでしょうか。これまで中井女流六段が女流棋界を引っ張ってきた時代は、同時に母親業との両立をどのようにするか模索されていた時代だったのではないかと拝察します。
中井 私に限らず、その点に関しては色々考えたり悩んだりしている人が多いでしょうね。私も何人かの後輩から話は聞きました。特にタイトルを目指そうとすると、大きな課題となります。
――当時は産休制度がなかったため、中井女流六段には臨月でタイトル戦を指した経験もあります。
中井 私より先輩の頃は棋戦が2つしかなかったので、同じような状況になった方はいませんでしたね。私の時もタイトル戦を延期してもらいましたが、主催上の都合もあり、ここまでという限度はあります。今も産休制度が完全に確立されているかというと、微妙なラインとは思います。
計画を立ててきっちり行えることではないので、厳密な制度として構築するのは難しい面もあるでしょうね。特に対局者同士の出産がかち合うと調整も大変になってきます。ただ、勝ち上がっている人が出産のために、挑戦者目前で残りの対局を不戦敗ということが何度か続き、それは残念に思いますね。ご本人はもっと悔しいでしょうけど。止むを得ないことなのかもしれませんが、何とかならないのかなあと。