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将棋ソフトは生かすも殺すもその人次第

――新しい技術ということで、将棋ソフトに関しては。

中井 女流棋士もみんな使っているんじゃないかと思いますけど、何て言うんでしょうね。ソフトは使っているんだけど、どう生かしていくかというのは難しいところです。評価値も出るけれど、その通りにはうまくいかないのが人間の指す将棋で、結局はソフトを生かすも殺すもその人次第です。うまく使えば武器になるし、逆に感覚が崩れていくところもあります。

 

――ソフトを導入されてから、ご自身の将棋が変わったと考えますか。

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中井 最新の戦型に関してはついて行くのが大変です。今までの将棋は、ある局面をみればそこに至るまでの展開が読めましたが、最近の将棋は途中の局面だけを切り取ると、何でこういう形になったのかというのがまったく分からないというくらいに駒が乱舞している印象があります。

――倉敷藤花挑戦を決めた直後のインタビューで「おじさんも頑張ったのでおばさんも頑張る」とおっしゃられていたことが注目を集めました。弟弟子の「おじさん」こと木村一基九段も、将棋ソフトの活用がタイトルに結びついた面はあると語っています。

中井 今、勝率が高い人は、ソフトをうまく使いこなせている人なのかという印象はありますね。ただ私自身のことで言えば、ソフトが示す手を選択しても、手だけを追っても感覚がつかめないと頭がついて行きません。特に今は早めに桂馬が跳ねていく将棋が多い。『桂馬の高跳び歩の餌食』という格言がありますが、その通りにすぐ取られてしまっている。ですが取られるのが前提という指し方なんですね。私たちが修業時代に学んだ感覚とはまったく違います。それがソフトを使う上で、ネックになることの1つです。

――最後に、番勝負で戦う里見倉敷藤花への印象をお願いします。

 

中井 普段話しているとよく笑うし、しゃべります。盤に向かっている姿と、普段の明るい姿とはギャップがありますが、芯が強いという印象です。とにかくマジメで、礼儀正しい。里見さんに限らず、今の若い子はみんなマジメで、聞き手をやっていても上手。しっかりしてますよね。里見さんが第一線で活躍されるようになってから長くなりますが、そのことで若い子には憧れであり目標になっていると思います。また、男性棋戦でも活躍しているので、そちらのほうでも頑張ってほしい。もし編入試験の資格を得たら、私個人としてはチャレンジして欲しいなと思います。

写真=三宅史郎/文藝春秋

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