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51歳でタイトル挑戦 中井広恵女流六段が語る対戦相手「里見さんのギャップ」

51歳でタイトル挑戦 中井広恵女流六段が語る対戦相手「里見さんのギャップ」

中井広恵女流六段インタビュー #2

2020/11/04
note

藤井聡太二冠ブーム

――ここからは最近の将棋界についてうかがいます。まずはいわゆる『藤井(聡太二冠)ブーム』に関してはいかがでしょうか。

 

中井 実は、藤井さんとはまだお話ししたことはないのですが(笑)。ブームは確かにあって、将棋を指す子供は増えました。ただブームはあくまでもブームなので、一過性のものとせず、どのように長く続けるかが課題です。一つ言えることは、将棋を指す女の子が確実に増えているということですね。これは藤井さんのブームより前からあった傾向ですが、あるいはそれに拍車がかかったかもしれません。比率が五分五分になったとまでは言いませんが、以前と比較して「将棋は男の子のゲーム」というイメージがなくなっているのではないかと思います。

――清麗戦、そして白玲戦と、最近相次いで創設された女流新棋戦についてはいかがでしょうか。

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中井 私のデビュー当時は2棋戦しかなかったので、感慨深いですね。当時は負けると次の対局がいつになるかわかりませんでした。単純計算では半年間、対局が出来なくなる可能性も。対局の場が増えるのは本当にありがたいことです。特に最近の情勢において、一般の方から見る将棋というものがどのようなものであるのかと考えます。

2棋戦しかなかったうちの一つ、女流王将戦にて(写真提供:中井広恵女流六段)

「将棋は絶対に必要なものではない」とは師匠が常々言っていたことで、「安定していた時代にはいいが、生活が大変な時代に将棋は厳しい」と。ただ(コロナ禍で)外出できないときに将棋があってよかったと言ってもらえることは多く、将棋指しという職業が皆さんの生活を明るくすることになっているのであればよいですね。またデビュー当時にはなかったネット、オンラインの技術と将棋の相性がよく、ファンの方に見てもらえる機会が格段に増えました。新しい時代を迎えた将棋界がさらに盛り上がっていくのかという期待はあります。