奇想天外・前代未聞!「高の」の出汁
「高の」は唯一無二の店であることをまず説明しよう。「高の」の出汁の作り方は奇想天外・前代未聞だ。そば湯に「大豆」を入れて呉汁のように煮込み、そこにシイタケ、なめこなどのきのこ、鰹節、宗田節などを入れて出汁をとっていく。見た目はまるでそば湯のような出汁である。そば粉やそば湯にはルチンなどが多く抗酸化作用が強いことが知られている。それを余すところなく使っている「高の」の料理は、養生料理と謳うに相応しい。そばは墨田区文花にある「株式会社霧下そば本家」から国産そば粉を仕入れ、手打ちで平打ち太めのそばを提供している。
今年で創業8年目。ようやく店の人気も定着してきてこれからというときにコロナ禍があり、高野さんは途方に暮れたという。そして、そば粉の仕入れ先である霧下そばの方から、玄そばのダブつきのことを耳にした。そして、試行錯誤の末、この問題を解決するようなユニークなメニューを開発したわけである。そのメニューとは「タコ焼き」ならぬ「江戸焼き」だという。
「タコ焼きは関西の一般大衆に深く広く浸透している人気食品で、タコと小麦粉をベースに作ってますよね。そこで、関東でもタコ焼きに寄り添うことなく、そば粉を使って、独自のメニューができないか考えたんです」と高野さんは話し出した。
「江戸焼き」とはいったいどんな食べ物なのか、期待が膨らむ。
高野さんにその作り方を説明してもらった。そのコンセプトは次のようなものであった。
- 小麦粉やタマゴを使わないで、そば粉だけを使う。
- タコを使わない(たこ焼きにリスペクトを込めて)。
- マヨネーズ、ソースは使わない(味の方向性を変える)。
- 関東でなじみの食材を使う
高野さんはおもむろに、プリプリの鴨肉を刺した串を炭火で焼き始めた。
「江戸焼きではたこの代わりに、鴨を使います」
というので、ちょっと驚いた。「高の」ではいま、ジビエ料理も人気となっている。発想はそんなところから来ているのかもしれない。