昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/11/15

大食い、水着、体を張ること……女芸人の“通過儀礼”はNG

 そんな彼女たちはしばしば、これまでの“女芸人”のあり方を問い直す。大食い、水着、体を張ること――。“女芸人”がこれまで通過儀礼のように経験してきたそれらの企画は、ぼる塾にとっては基本NGだ。大食いに関していえば、おいしく楽しく残さず食べて太るのがポリシー。あんりはこうも語る。

「楽しくないことが嫌なんですよ。私たちが楽しんでる姿をみて、楽しんでいただきたい」(『しゃべくり007』2020年5月4日)

 なお、上述の結成経緯からもわかるとおり、ぼる塾は正式には4人組のカルテットだ。しかし、彼女たちは独自の育休制度を取り入れており、酒寄は現在育休中。テレビではもっぱらトリオとして活動している。彼女たちによると、ぼる塾は出入り自由。個々人の私生活の変化に柔軟に対応できる形で、芸人としての仕事を続けていきたいという。それもやはり、人生を楽しみたいからだ。

ぼる塾チャンネルより

 そんな“楽しさ”を中心に据える彼女たちのスタンスは、ワークライフバランスの見直しやジェンダー不平等の是正が求められる社会の流れと符合しているように見える。いわば、彼女たちの“楽しさ”は世の中の“正しさ”と共振している。彼女たちへの注目が結成数か月にして一気に高まった背景には、ネタやキャラクター、トークの面白さはもちろんのこと、そんな時流があるのは確かだろう。少しずつ変わる方向にある社会の擬人化として、時代が彼女たちをテレビに召喚しているのかもしれない。

 そもそも、今の女性芸人たちへの注目は、従来の“女芸人”の問い直しというフレームに基づいている節がある。笑いはボケが放たれた瞬間より、的確なツッコミが入ったタイミングで起こる。現在の女性芸人たちの言動の一部も、従来の芸人やバラエティ番組のあり方をボケに仕立てるツッコミとして機能し、笑いを生んでいる面があるのかもしれない。

 だとしたら、現在の女性芸人をめぐるムーブメントの中心に、ぼる塾がにわかに躍り出たのも頷ける。ぼる塾には、同世代の芸人の中でも随一のパワー型のツッコミ、あんりがいる。

“やんちゃエリート”なあんり

 現在テレビで人気のツッコミ芸人の多くは、独特のたとえや方言などツッコミの中にボケの要素が混ざる。千鳥のノブやフットボールアワーの後藤輝基、南海キャンディーズの山里亮太などが典型例だろうか。第7世代でいえばぺこぱの松陰寺太勇がそうだろう。

 そんな中で、あんりのある意味で淡白なツッコミはむしろ異例だ。誰かがボケれば、あるいは誰かがあんりをイジれば、打てば響くようなツッコミが短いセンテンスで返ってくる。その背景には、父が元暴走族、母が元レディース、兄2人が元ヤンという“やんちゃエリート”な彼女の家庭環境があるのかもしれない。おそらく、持って生まれた肝の据わり方が違う。