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「金貯めたいんならまあ3ヶ月は頑張らな」

「お前がいくら欲しいかは知らんが、10日頑張ってももらえるのはせいぜい3万やぞ。金貯めたいんならまあ3ヶ月は頑張らなあかんな。まあ経験がないなら契約型は諦めろ」

ドヤの屋上からは西成の街と通天閣が見えた(筆者提供)

 随分と上から目線な言い草だが、いくら西成とはいえ経験がないと仕事を見つけるのは難しいようだ。このおじさんもなかなか仕事が見つからず、朝からセンター内を行ったり来たりしているのだろう。

 時計の針は17時を回ろうとしている。センターの周りではすでに路上に布団を敷いて眠りについているホームレスも多い。今日はもう働き手を探している業者もいないようだ。春に入ったとはいえ、まだまだ肌寒い西成。そろそろ宿を探した方が良さそうだ。

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(筆者提供)

 センターから南に進み、あいりん地区の中心部へと入る。メディアは「西成は外国人観光客の街になりつつある」と報道しているが、そんな空気はほとんど感じられない。たしかに「IKIDANE HOUSE」と書かれたゲストハウスの前ではバックパッカーらしき欧米人が路上に座りスマートフォンを触っているが、目に入る建物はドヤ(簡易宿泊所)ばかり。

 仕事にあぶれた労働者たちが大挙して押し寄せ、暴動の街と化していた90年代。しかし現在では「福祉歓迎!」「敷金・保証金なし」という謳い文句を掲げた看板ばかりが目立つ。いくら身体が資本のドカタとはいえ、年をとればそりゃ衰えはくる。西成が労働者の街から生活保護の街へ変わったということは、歩いて数分でひしひしと伝わってきた。

あいりん地区には1泊1000円ほどの簡易宿泊所が立ち並ぶ。現在は生活保護受給者が主な客である(筆者提供)

「オラッ! オラッ! 殺されたいんか?」

 しばらくすると三角公園が見えてきた。形が三角だから三角公園と呼ばれている何の変哲もない公園だ。しかし場所が場所なだけに大阪市民も恐れる魔窟として知られている。なんでも大阪市民は、「あの公園だけは入っちゃダメ」「なにがあっても近寄るな」という教育のもと育っているらしい。たしかに奥に進むにつれ、さっきまで聞こえていた路上の笑い声もなくなってきた。

「オラッ! オラッ! 殺されたいんか?」

 三角公園の入り口で浮浪者が暴力をふるわれている。袋叩きにしている40代らしき男3人も浮浪者といった出で立ちだ。荷物を持っているとヤバそうである。

 日中であの様子では夜は一体どうなってしまうのだろう? 私は三角公園をあとにした。あまりここには近づかない方が良さそうだ。