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コント師・劇団ひとりが語った“葛藤と転機” 「全部目立とうとする」のをやめた理由

NHK「コントの日」劇団ひとりさんインタビュー #1

2020/11/23

source : 文藝春秋 digital

genre : エンタメ, 芸能, テレビ・ラジオ

note

「たけしさんの横に座りたい」という思いはたぶん誰よりも強い

――全員トークのコーナーでは、ひとりさんは「たけしさんと他の演者さんをつなぐ役」をされているように見えます。

ひとり そうですね。早めにたけしさんの横に付いて、それをすごくアピールしました。スタッフに「たけしさんの横にはひとりを置いておいたほうがいいね」っていうのを早めにアピールしておきたくて。スタジオ入りした時からすぐ、たけしさんと世間話をしている風景をスタッフに見せて、「あれはちょっと信頼置けるね」っていう(笑)。

 

――実際一視聴者としても、なんかとても安心します。

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ひとり やっぱり僕はたけしさんが好きだから、たけしさんの横に座りたいという思いはたぶん誰よりも強い。その自負はありますからね。

 だって、そもそも僕がこの世界に入ったのは『ひょうきん族』ですから。その人と一緒にコントやってるって、こんなありがたいことはないんです。夢みたいですよね。

「コントっていうのはセリフを頭に入れないと間が取れないだろ」

――たけしさんから何かアドバイスされることありますか?

ひとり たけしさんはそういう、たとえばダメ出しだとか、そういうことは照れ屋さんだからしないんだけど。一昨年かな、たけしさんがすごい長ゼリフのコントがあったんです。たけしさん、それを暗記してたんですよ。たけしさんってハリウッド映画でもカンペでやるの。しかも、英語のセリフは嫌だから日本語に変えろって、脚本を日本語にさせたりもする。そのカンペも相手役のスカーレット・ヨハンソン(『攻殻機動隊』の少佐役)に持たせて。僕も以前CMの現場でご一緒しましたけど、一字一句全部カンペでしたよ。カンペを置く場所がない時は、演者の腹とかに貼り付ける(笑)。

――色々すごい。

 

ひとり そんな方がですよ、セリフをブツブツブツブツ練習してるんです。「たけしさん、カンペでいいじゃないですか」って言ったら「いや、コントっていうのはセリフを頭に入れないと間が取れないだろ」ですって。ハリウッド映画でセリフ入れない人が、コントだとセリフ入れるんですよ。僕もう感動しちゃいましたね。やっぱりフランス座でコントを学んで、深見(千三郎)師匠からいろいろ学んできたたけしさんには、コントに対する並々ならぬ思いがあるんだって。僕もたまに、ちょっと長いセリフを「これカンペにしてもらえませんか」って相談しそうになるけど、これは言っちゃいけないなと思いますよね。たけしさんがそうなんですから。

――コントにおける「間」の大事さ。

ひとり 笑いにするには、やっぱりちゃんとセリフを入れなくちゃいけないっておっしゃってました。