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コント師・劇団ひとりが語った“葛藤と転機” 「全部目立とうとする」のをやめた理由

NHK「コントの日」劇団ひとりさんインタビュー #1

2020/11/23

source : 文藝春秋 digital

genre : エンタメ, 芸能, テレビ・ラジオ

note

コントで「ここは死ぬ」っていうのも大事な役割

――すごいですね。だって、やっぱりお笑い芸人さんは、「自分が一番面白い、その面白さを出したい」みたいなところが原点にあると思うんです。そこに折り合いをつけながらというか、自意識をいったん引っ込めて、誰かの面白さを引き出す方向にシフトできる。

ひとり 自分の面白さみたいなものにも多少見切りがついてきたんですよ(笑)。しょせん僕が頑張ってもこの程度なのね、というのが、ちょっと見えてきたというところもあるんでしょうね。

コント収録の本番前はフェイスシールドをつける

――自分はヒットを打たなかったけど、チームは勝ったからいい、みたいな?

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ひとり そういうことでしょうね。あんまり僕は野球を知らないんだけども、ポテンヒットみたいなのでも、結局それがチームの勝利につながったんだったらいいや、というふうに。まあ……ポテンヒットは嫌なんですけど、犠牲フライみたいなことですかね。

――自分はアウトになるけど、勝利に貢献はしたと。でも、コント番組ってそれの集大成みたいな感じはありますよね。

ひとり そうですね。コントは全員が目立とうとすると大変なことになりますからね。言葉は悪いけど、死に役ってあるんで。「ここは死ぬ」っていうのも大事な役割。たまにそれを分からないと、メインのボケの前に変なしゃべり方だけで笑いを取っちゃう人とかいるんですよ。そうなると、次の笑いがちょっと薄くなっちゃう。

――コントはチームプレーなんですね。

ひとり ただ僕も初期の若かった頃は全部目立とうとしてましたから。いかに面白くしてやろうかって。自分がメインじゃないのにね。合同コントをやってもほんとうまくいかなかったですもん。みんな我が我がになっちゃうから、流れもへったくれもない。「コントの日」は熟練者が多いから、そんなバカなことは誰もやらない。そういうメンバーしか呼ばれてませんね。

 

写真=榎本麻美/文藝春秋

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