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コント師・劇団ひとりが語った“葛藤と転機” 「全部目立とうとする」のをやめた理由

NHK「コントの日」劇団ひとりさんインタビュー #1

2020/11/23

source : 文藝春秋 digital

genre : エンタメ, 芸能, テレビ・ラジオ

note

――作り手の視点ですね。

ひとり そっちに意識が行くんですよね。頭はサブ、調整室に行っちゃってることもあります。ここで自分が気の利いたことを言うよりも、「あれ、まだあんまり困ってる顔撮れてないな」とか。クイズ番組って困ってる顔が命ですから。

 

――自分の面白さより、番組全体の利益。

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ひとり はい。だって、雇われの身ですから。使っていただいてなんぼですから。本当にそういう意識でなるべくやっております。何なら時には、「このゲスト、今、このまま押したら泣いてくれるかな」とかね(笑)。

『ゴッドタン』『ヘキサゴン』…長寿番組のメインはMCじゃない

――そのように意識が変わったきっかけは?

ひとり そうですね。『ゴッドタン』という番組はずっとやらせてもらってるんですけど、毎回僕とおぎやはぎだけで面白いことをやろうとすると、もう尽きるんですよ。やっぱりゲストに来ていただいて、ゲストに活躍してもらわないと。ゲストが楽しいと思って帰ってくれないといいものはできないんだなというのも、長年やってると分かってくるんですよね。だから、自分の番組に関して言えば、究極自分はあんまり目立たなくていいって思ってる。来た人がスターになってくれたら、それが一番ありがたい。古い話になりますけど『元気が出るテレビ』だったら、エンペラー吉田を見つけるほうが大事だったりするんですよ。

――未知なるスターの発掘ですね。

ひとり それが長続きの秘訣なんじゃないかなと思って。長く続いて愛される番組って、メインはMCじゃない。『ヘキサゴン』にしたってそうでした。おバカチームを作ったり、CDデビューさせたり、紳助さんはたぶんそういう意識でやっていたんだと思うんです。

 

――たしかにたけしさんにしても、ご自身の番組ではたけしさんがずっとメインというわけではない。

ひとり 僕はそれ、20数年やってきてやっとできるようになってきました。だから「あんまりテレビ的には活躍できてないな」という日も、実はあの話もこの話も僕が引き出したんだと考えて、それで満足して帰れるようにはしてます。

 逆に、ゲストとして招かれた時は、例えば伊集院さんのラジオに呼ばれた時もそうでしたけど、徹底的に料理してもらおうと思って行ってるんですよね。何も着飾らずにむき出しで行くというか。ホストの伊集院さんに対して、なるべくこっちは全部吐き出すことが礼儀だと思っているので、壁を作らない。