本当の自分って、一番つまんない自分ですね
――ひとりさんは何をしている時が一番「自分だな」と思いますか?
ひとり そうですね……3Dプリンターをいじったり、バイクをいじったり、ものを作ってる時っていうのは、何も考えないですからね。平気で5時間6時間経ったりするから。たぶんあれが一番、素。本当の自分って、もう誰か目の前にいたら本当の自分じゃないような気がしていて。
――ああ、なるほど。
ひとり 一人じゃないと、やっぱり本当の自分にはなれなくて。奥さんに対してだって、子どもに対してだって、本当の自分かと言われちゃうと、そうじゃないような気もする。子どもに対しては立派な父親を演じているような気がするし。本当の自分でいったら飯作るのめんどくさいんだけど、立派な父親でいようと思うからご飯を作ってあげられる。
――無理に演じているわけではないけど、誰かを対面にすると「素」ではなくなりますよね。
ひとり いろんな顔がある。だから、本当の自分って、一番つまんない自分ですね。そして、一番つまんない自分は、たぶん物を作っている時の自分かもしれない。何も考えない、誰にも気を使わないし、目の前のことしか考えないから。
――でも、その時間は必要であると。
ひとり そういう時間がないと、ちょっとうんざりしちゃうかもしれないね。
――昔みたいにギャンブルしたいとは思いませんか?
ひとり 不思議ですね。ああいうのって余裕ができるとしなくなるんですね。だって本当に大好きだったんですよ。1000円しかなくて飯食べれないのに、その1000円を賭けてパチンコをやってたりしたから。不思議なんですよね。ただ、実は宝くじだけは買い続けてるんですよ。全然当たってはいないんですけど。
――芸能界という一番難しい宝くじを当てていらっしゃるから。
ひとり たけしさん言ってましたね。ギャンブルは絶対やらないって。そこで運を使うのが嫌だからって。萩本欽一さんも、何かいいことがあった人は外すって言ってましたからね、作家とかで。そこで運を使っちゃってるって。
――人生プラマイゼロな考え方。
ひとり そういう先人たちのアドバイスも無視して、僕はサマージャンボと年末ジャンボ。これだけは買い続けます。まあ収益はいろんないいことに使われてますから。
写真=榎本麻美/文藝春秋