昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/11/18

 今回「炎上」したルポは、2020年11月11日付けで『cakes』上に記事が公開された「ホームレスを3年間取材し続けたら、意外な一面にびっくりした」である。

 この記事はcakesクリエイターコンテスト2020の優秀賞を受賞しており、著者は夫婦のライターユニットである「ばぃちぃ」。名前を検索する限り、他の商業メディアでの寄稿先はほとんどないようだ。

「人権意識の低さを堂々と露悪してる」

 この記事についての批判は、特にSNS上に数多く上がっている。今回の「炎上」は一般のネットユーザーの声の他に、ツイッターのアルファアカウントや、一定数の著書があるなど文筆に携わる人たちも活発に反応している。

 たとえば、ライターの「くらげ」氏(著書『ボクの彼女は発達障害』など)やトイアンナ氏(『モテたいわけではないのだが』など)、深爪氏(『深爪流 役に立ちそうで立たない少し役に立つ話』など)、台湾人作家の温又柔氏(『魯肉飯のさえずり』など)、ラノベ作家の江波光則氏(「魔術師スカンク」シリーズなど)といった、そうそうたる面々である。

 以下に批判の一部を引用しよう。

〈このライター、ホームレスを人間として見てないのは明白なんだけど、その人権意識の低さを堂々と露悪してるにもかかわらず、cakesに連載するのを決定するというのはちょっと迂闊じゃないかしら…〉(くらげ氏)

〈ホームレスは「新しくってオシャレな趣味」じゃないんだよ…観察しておもしろ~い!汚いと思ったらマシだった!って書くものじゃないんだよ、それこそが差別なんだよ… 編集さん、この記事をなぜ出す前に止めなかったんですか…〉(トイアンナ氏)

©iStock.com

〈何が怖いって、この人達、ホームレスにはホームレスのままでいてほしいって普通に思っているでしょ、自分たちとは違う文化を維持して欲しいみたいな。エスキモーじゃねえんだぞ。〉(江波光則氏)

〈cakesクリエイターコンテスト2020優秀賞を受賞した河川敷で暮らすホームレスを取材したという記事がひどいと話題だが、本当にひどくてのけぞった。記事の執筆者たちやあれを優秀とみなす人たちにむかって、木村友祐『野良ビトたちの燃え上がる肖像』を叩きつけたくなってる。〉(温又柔氏)

おそるおそる記事を読んでみた

 結果、cakes運営側は11月16日11:28付けで、批判を受けて記事の文言を修正。さらに同日17:06には著者からのコメントが記事末尾に添えられることになった。

 ここまで非難を浴びているからには、当該の記事はさぞかし、醜劣な差別意識がネトネトと腐臭を放つ獰悪極まりない最低の文書なのだろう。そう考えた私は、ヤフーニュースのコメント欄や排外主義系のまとめブログを眺めるときと同様の心の準備を整えたうえで、おそるおそるcakesの記事URLをクリックした。そして読み終えて、心の底から驚愕した──。

 なぜ、こんな記事がここまで吊し上げられるのか、さっぱりわからなかったからだ。