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2020/11/18

 記事の内容は筆者らがホームレスに密着したものである。彼らの取材の動機は「自分とは違う生きかたを覗きに行きたい気持ち」だ。そして、「ある種異世界のように」感じながら入り込んだ河川敷のホームレスのコミュニティで、彼らが「住居」を建てていることや自転車をきっちりメンテナンスして使っていることなどに驚いたと記す。筆者たちは、自分たちとは違う生き方を覗く行為の「期待とワクワク」ゆえに、ホームレスのもとに3年間通っているという。

確かに記事のレベルは高くないが……

 念のため書いておくと、当該の記事のフワフワした無邪気な文体は個人的には好きではない。また、表現や構成が悪い意味でセミプロ的で、重複する内容が多く冗長だ。筆者の「ばぃちぃ」夫婦には申し訳ないが、こんな機会でもなければ最後まで読み通すことはまずないと思う。だが、記事作成の技量が低いことと、筆者が人格否定レベルの批判を受けて然るべきかは別の話である。

 記事の文言は11月16日11:28に修正されたとのことなので、インターネットアーカイブを使って前日「09:24:55」付けの修正前の版も確認してみた。

 前後の修正は、冒頭でcakes運営側が書いたリードの表現がちょっと変わったこと、本文中で、もともと「ホームレス」と表記されていた部分が「ホームレスの人たち」などに修正されたこと(なにが違うんだろう)、記事末尾に取って付けたような著者コメントが追記されたことだ。修正前の版と大きく中身が違うわけではない。

 
11月16日午前までのリード部分(上)と、その後のリード部分の変化。

 筆者たちが受賞した「cakesクリエイターコンテスト」は過去2回しか開催されておらず、受賞の報酬は、cakesのサイト上で連載を持たせてもらえることだ。創業9年目のベンチャー企業が、業務を外部委託する新人ライターの募集コンペを、ちょっと箔が付くように言い換えただけである。少なくとも権威ある賞とは言い難い。

“潜在的な差別意識”という問題

 駆け出しのライターが書いた技術的につたない記事は、読んでいて痛々しいと感じる人が多いかもしれない。ただ、原文には露骨な差別用語や、ホームレスの人格を貶めるような表現(「彼らは怠惰だ」など)はない。ホームレスの実名や顔が暴露されているわけでもない。もちろん社会からのホームレスの排除を訴えていたり、陰謀論と結びつけたりもしていない。

 この記事が叩かれた理由は、ホームレスを興味半分に「異文化」の観察対象として見るような筆者の姿勢や、ホームレスを生み出した社会構造に思いを致す気配がまったくない浮ついた文体に(直接的な差別表現を用いていなくても)潜在的に差別的なニュアンスを感じて不快を覚えた人が一定数いたからだ。SNSに投稿された大量の批判を読むと、そういった説明になるだろうか。「当事者性が欠如している」といった批判もあった。