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――加納さんのエッセイは、とんでもないところにたどり着く。出だしは普通の学生時代のお話だったのが、急にウワーッと大旋回するみたいな。

加納 そうですね。ネタのほうは立ち上がってからのほうが楽しくなるんです。楽しくなるまでがちょっと時間がかかる。

――本を読んで面白いなと思ったのは、初めの頃(2018年)は加納さんのワールドが色濃く出ていて、現在に近くなるにつれて「現実」を考察するような方向にシフトしているような。ご自身の中でも書きながらそういう変化は感じていたんですか。

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加納 全然自分ではわからないんです。「最近こういうのが多い」と言われて気づくという感覚なので。特に「今年はこういうのを書こう」っていう感じではなかったんですけど、たぶん自然に出ちゃってるのかもしれないですね。

 

――最近芸人さんのエッセイを読ませていただく機会が多いんですが、芸人さんによって全然違うんですよね。加納さんのエッセイは特に違う感じがあって。

加納 うれしい。

――ただどの角度からインタビューしていいか難しい(笑)。

加納 そうかもしれないですね(笑)。怒ってばっかりおる人やったら、それなりのことを聞けるかもしれない(笑)。

自分のことを書くのは「いまだにちょっと恥ずかしい」

――今回の特集のテーマでもあるんですけれども、女性芸人さんが直面されている大変なことや悩んでいることに対しての思いを赤裸々に書かれている方が多いですが、そういったテイストではないですね。

加納 今まで自分のことを書くっていうことに慣れてなかったので、いまだにちょっと恥ずかしいんですよ。これでも、私の中ではわりと舞台とかよりはさらけ出しているつもりというか。「自分の小っちゃい時の話とかしてもうてるで」という(笑)。

――自分のことを書くのは恥ずかしいですか?

加納 「そもそもこれに誰か興味あるのかな」って思いながら書いてました。

 

――「芸人は自分のことを出さない」という理想像というか、芸人イメージが自分の中にあったりしますか?

加納 いや。たぶんうまく見せれないって思ってるんだと思います。自信がないというか。プライベートのことを言って面白い、強い人がいっぱいいる中で、うちらはそっちで戦えないのかなと思ってたので。だからこそ作ったもの、作品でってやってきたので。やっとここで……。

――出せたという。

加納 出せたというか、出してもいいのかな、くらい。もしこういうお話が3年目4年目に来てたら、たぶん「いやいや」ってなってたと思います。

【続きを読む】「ブスいじりの是非より、結局はお笑いが好きかどうか」女芸人Aマッソ・加納が抱く「野望」

撮影=鈴木七絵/文藝春秋

イルカも泳ぐわい。

加納 愛子

筑摩書房

2020年11月18日 発売

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