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海外渡航が制限されるなか出版された「海外ガイド」

 冒頭で紹介した『地球の歩き方』はコロナ禍で海外旅行ができなくなってしまった影響で、ダイヤモンド・ビッグ社から学研に事業譲渡されてしまった。Go Toトラベルキャンペーンもあり、国内ガイドブック市場は活気づいている様だが、海外ガイドブック市場は非常に厳しい状態が続いている。渡航できないどころか、取材にすらいけないので当然だろう。そんな中で「そういうやり方もあったか」と感心したのが、朝日新聞出版編『妄想Trip!  #おうち韓国』(朝日新聞出版)。

『妄想Trip!  #おうち韓国』
妄想で旅行するという発想の転換

 コロナになる前は日韓関係の悪化で、路線数の割に航空需要が下がり、航空券が数千円レベルの投げ売り状態で販売されるほどだった。日韓関係の悪化とは対照的に、若年層の韓国ブームは空前の規模。誰も日本と最も近い韓国でさえも1年近くも行けなくなるとは思ってもいなかったのではないだろうか。部屋を韓国風に変えるインテリアや文房具や、オンラインで韓国語が学べる講座を紹介して、韓国ロスを埋めるように日本の自宅で韓国気分が味わえる方法を指南する。ガイドブック出版社はこれの各国版にチャレンジしてもいいかもしれない。

“国際”恋愛についての一冊も刊行された

 海外渡航と言えば、熊田忠雄『サムライ留学生の恋』(集英社インターナショナル)が読み応えがある。著者は『そこに日本人がいた! 海を渡ったご先祖様たち』(新潮社)など幕末・明治初期に海外渡航をした日本人を紹介した著作などで知られる。

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『サムライ留学生の恋』
海外に行きづらい時期だからこそ読んで楽しい元祖・国際恋愛本

 本書は外国人と恋に落ちた明治の日本男児にフォーカスを当てた。開国間もない頃に国籍・民族を越えた純愛を貫いた青木周蔵や新渡戸稲造などの円満な国際結婚も紹介されているが、むしろ面白いのは逆の破局やプレイボーイ、痴話の類。特に凄まじいのが尾崎三良。日本の親族には内緒で、留学先のイギリスの下宿先の娘とスピード結婚した。しかし突如、妻子4人を残したまま勝手に単身帰国し、わずか4ヶ月後に別の日本人女性と重婚。外交問題にまで発展し、イギリスの「現地妻」に手切れ金を払って、離婚した。実はこの人物が日本人初の国際結婚で、なおかつ国際離婚だそうだ。