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2020年を振り返るうえで外せない「コロナ」をテーマにした珍書も…

 2020年に特に数多く出版されたテーマに「東京」以外に「コロナ」がある。hontoの書名検索で調べた所、2020年に「コロナ」という言葉を含む書名で出版された本は既におよそ700冊以上もある。2019年で同様に調べると、わずか41件。しかも叢書名でヒットしてしまう「コロナ・コミックス」と「コロナ・ブックス」「Coronary Intervention」がその中の40冊を占め、全く無関係なのは『職場体験完全ガイド 会社員編 61 コクヨ・ヤマハ・コロナ・京セラ』のみ。この事からも分かる通り、巷にはコロナ本が溢れかえった。しかしながらいずれも「免疫力を高める」といった家庭の医学本あるいは、政治経済の観点から論じたものばかり。既にコロナ本は飽和気味であり、マンネリ感は否めない。

『コロナマニア』
オリジナリティあふれる「コロナ」の珍書

 その中で、コロナビールやトヨタ・コロナなど「元々コロナ」だったものを徹底的に集めた岩田宇伯『コロナマニア』(パブリブ)は筆者が編集に携わった。手前味噌になってしまうが、本好きの間では数多あるコロナ本の中で、オリジナリティを発揮した「コロナ珍書」として認識された様である。

珍書不作の年だったかもしれない2020年

 さてざっとここで2020年に刊行された、筆者の印象に残っている珍書を紹介した。実は残念な事に、本稿では医学書や技術書、法学書の類いを紹介できていない。これらのジャンルの専門書は地方自治体の一般市民向けの図書館では所蔵されておらず、一般書店でも販売していないものが多いのである。特にその中でもニッチなテーマの専門書となると、国会図書館や都立図書館でしか閲覧できないものが大半だ。今現在も感染防止対策として、入場制限が課せられており、なかなか珍書と見られる候補の現物を確認できていないのである。

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 それだけでなく、珍書の元となる珍研究や珍論文は、国会図書館に所蔵されている一次資料を参照・依拠している事が多い。2020年は多くの著者や研究者が国会図書館の利用を断念せざるを得なくなった。また国外にも調査渡航ができず、執筆の中断を余儀なくされている。2020年は珍書不作の年だったかもしれない。2021年にコロナが収まれば、この間、堰き止められていた珍書が多く出版されると期待している。