2006年、“中国人妻の夫殺人未遂事件”が世間を騒がせた。お見合いツアーを経て結婚した中国人妻の鈴木詩織が、親子ほども年の離れた夫、鈴木茂に、インスリン製剤を大量投与するなどして、植物状態に陥ったのだ。夫の目を盗んで性風俗で働いていたことや、1000万円で整形した等との噂も影響して、センセーショナルな報道が相次いだ。そんな中、事件記者として取材を進めていた、田村建雄氏は、獄中の詩織から300ページに及ぶ手記を託される。取材の様子を『中国人「毒婦」の告白』から抜粋して紹介する。(全2回の1回目)
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ミョウガ茶が原因で傷害罪に...
体調不良に悩んでいた詩織は、ある日、テレビのお昼の番組で、ミョウガの葉を煎じて飲むと胃腸にいいという話を知る。
ミョウガなら家の周辺に沢山自生している。
さっそく、ミョウガを摘んできてテレビが紹介していた方法で煎じてみた。湯飲みに移し飲もうとすると、ツーンと、こうばしいミョウガの香りが鼻を突く。もともと山菜が好きだった彼女は、一気にそれを飲んでみた。すると何か気分がスッキリしたように思えた。それ以降、詩織はミョウガ茶の虜になった。
なにしろ、朝晩続けて飲むうちに、それまで医者にもらった薬でも治らなかった胃痛が、知らぬ間になくなっていたのだ。だから詩織は、いつもミョウガ茶を多めに作り、冷蔵庫に保存していた。
そして、03年10月18日。そのミョウガ茶が原因で、詩織が傷害罪に問われる最初の事件が起きる。
手記によれば、そのころ、詩織は、茂に言われたからではなく、中国にいる子どもたちを日本に戻そうと真剣に考え始めていた。長男はまもなく小学校に入る歳だし、そろそろ日本語もしっかり学ぶ必要がある。2人の子どもが戻るとなると学校に着ていく服や学用品などもろもろ資金がいる。子どもが戻ってきたらしばらく千葉は離れられないだろう。
ならば中国に行く前に東京の風俗でお金を稼いで、それから中国に行こう。それに、ミョウガ茶だ。身体にとてもいいミョウガ茶を沢山作っておいて、中国から帰ったあともスグに飲めるようにしよう。保存するためのペットボトルを何本も用意した。