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「すごく単純なことなんですけど、環境が変わればよくなることもあると思っていて。だから、トヨタ紡織というチームが声をかけてくれた時に『最速でいつから寮に入れますか?』という話をしました。少しでも早く新しくスタートを切って、今度は大学時代のように躓かないようにしたかったんです」

 そして羽生は少しずつ復活の道を歩み始める。

10月の中部実業団陸上競技選手権では10000mで28分20秒の好記録 ©Agence SHOT

 最初から上手くいったわけではなかったというが、スタッフや監督の力も借りながら、徐々に傷を癒し、もう一度基礎から鍛え直していった。

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「周りに支えてもらった部分が大きいですね。声をかけてくれたトヨタ紡織の白栁(心哉)監督が自分に可能性を感じてくれたなら、もう自分でどうしたい、こうしたいではなく、それに染まっていこうと思えたんです」

 環境を変え、心機一転することで、大学入学時に纏ってしまった黄金色の虚勢は少しずつ剥がれていった。それに伴って、周りの選手や周囲の声を気にすることも徐々になくなっていったという。

 そうして、だんだんとかつての強い羽生が帰ってきた。

高校以来、6年ぶりとなる自己ベストの更新

 9月には5000mで高校2年時以来、6年ぶりとなる自己ベストをマーク。11月に行われた中部実業団駅伝では1区を任されると、箱根駅伝のスター選手だった服部弾馬(トーエネック)や、MGCファイナリストの宮脇千博(トヨタ自動車)らを抑えて会心の区間賞を獲得した。

中部実業団駅伝1区で快走を見せた羽生 ©Agence SHOT

 12月4日には、自身初出場となる日本選手権でも5000mで9位に食い込み、名実ともに日本トップクラスへと返り咲いたことを証明して見せた。

「正直、何かをやったから急に復活したとかはないんです。目指す練習法自体も、大学時代とそこまで変わるわけじゃない。ただ、変わったことと言えば、いまは目の前のことで本当に精いっぱいで。なんなら今日の練習の、その1本をどうするかでいっぱいいっぱいなんです。

 あんまり先が見えていないと言えばそうなんですけど、まずは目の前の練習のことしか考えられない。それはトヨタ紡織にきてからずっとそうです。やっぱり先輩の練習や頑張りを目のあたりにして、練習は嘘をつかないことを改めて気づかされた。それが大きいのかもしれません」