将棋のプロである女流棋士。最近ではテレビ番組やネット番組で目にすることが多くなってきました。しかし、将棋の対局以外に、彼女たちがどんな仕事をしてどんな生活を送っているの? そんな謎に包まれた職業、女流棋士の日常に“観る将漫画家”のさくらはな。さんが密着!
“えりりん”こと山口恵梨子女流二段の対局、イベント、取材などの仕事から、旅行や食事、学生時代の過ごし方などのプライベートな日常まで、そのすべてを追ったコミックエッセイ『山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々』(竹書房)の試し読みをお届けします。
「解説の先生のすごさってあまり伝える機会がない」
――この本は、さくらさんが山口先生への取材を通して作ってきたんですよね。
さくら そうですね。喫茶店や会議室でお話を聞いたり、一緒に将棋会館に取材に行ったりもしました。最近は、Zoomでお話を聞くこともあります。
――本のなかでは、いろんなエピソードが紹介されていますが、印象深い話やオススメの話など教えてください。
山口 私は、木村一基先生(九段)と藤井猛先生(九段)の話をご紹介できたのが嬉しかったです。
さくら 解説名人であるお二人は、客層を見て話す内容も変えておられるんですよね。
――聞き手が話せなくても会話の流れを作る藤井猛九段のイラストに「解説も藤井システム化」と書いてあって面白かったです。
山口 解説の先生のすごさってあまり伝える機会がないので、こうしてみなさんに知ってもらえて嬉しいですね。
――山口先生にとって初めての聞き手のお仕事は、高校生のとき、お相手が藤井猛先生だったんですね。
山口 当時は「はい」しか言うことが思いつかず……厳しかったです。でも今ではこんなに話すようになりました。昔は本当に口数が少なかったんですよ。
――昔というのは?
山口 女流棋士になるまでですね。
――では、昔から山口先生のことをご存知の方は、ずいぶん変わったなという印象を持たれる?
山口 そうですね。小学校の先生とか、女流棋士でいうと安食さん(総子女流初段)は、中学2年生の頃からご存知なので「すごい変わったね」っておっしゃいますね。