「えりりん」といえば「山口恵梨子女流二段」――。「観る将アワード2019」ではベスト聞き手賞にも輝いた、将棋ファンにとってはおなじみの存在だ。
多くの人がその愛称を知る彼女を通して、女流棋士の日常を描いた漫画『山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々』(竹書房)が刊行された。作者は、数々の媒体で将棋に関する漫画を発表してきた「さくらはな。」さん。
本稿では、お二人から聞いた同書の楽しいエピソードをご紹介していこう。
振り駒は8回振ると先手が出る?
――発売から数日経ちましたが、読んだ人からの感想などありましたか?
山口 私は「鳩やぐら」さんの「肉豆腐山椒弁当」の美味しさについて語っているのですが、ぜひ食べてみたいと言われました。
さくら 私には、この本の中で紹介している「山口先生の振り駒が見たい」という声がありましたね(笑)。
――山口先生の密かな研究によると、振り駒は8回振ると先手が出るという話ですよね。これは、本当なんですか?
山口 本当ですよ! 私、めっちゃやりましたもん。
――ちなみに今、山口先生は、振り駒をされることはあるんですか?
山口 今でも、月に3回ほど記録のお仕事をしているので、そのときにしています。
――そのときは、この技は使ってない?
山口 8回振ると「歩」が出ると信じているので、絶対に8回だけはやらないようにしています。
さくら 何回にしてるんですか?
山口 最近は11回にして、思いっきり放り投げるようにしています。
「歩」を表にして手に握り、8回振れば出ますからね
――ここに駒があるので、実際に見せてもらってもいいですか?
山口 いいですよ。
さくら 山口先生は、振り駒がすごく早いんですよ。
山口 開始間際に来られる先生もいらっしゃるので、早く振ることも大事なんですよ。じゃあ、やりますよ。「歩」を表にして手に握り、8回振れば出ますからね。いち、にい、さん、し、ご、ろく、しち、はち!
(歩が3枚出る)
山口 ほら!
さくら おー!
――全部の駒が「歩」になるわけじゃないんですね。
山口 全部じゃないんですけど、「歩」が出やすいんですよ。
――いつ気がついたんですか?
山口 小学5年生のときですね。
――それは、誰がやってもそうなる?
山口 それはわからないですね……。やってみてください。
さくら では私が。
(同じように8回振ると「と」が3枚出る)
山口 あれ? 振り方が悪かったですか?
――ではもう1回。
さくら あ! 出ました!
山口 ほら!
さくら おー!
――(まあ……2回やれば1回は……。)