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――紙コップのマスクは、宮崎監督のお手製だったんでしょうか?

島本 たぶん、録音監督さんが作ったんじゃないかな。音関係は、すべて録音監督さんが責任を持っていますから。

 収録の時は、ブースにプロデューサーや演出の方たちもいらっしゃってはいますけど、スタジオには入って来ることはまずないです。プロデューサーや監督の意見なども、録音監督だけがスタジオに入ってきて私たちに伝える。仕事が完全に分かれていて、どの現場も基本はそうなっています。『もののけ姫』の時は、宮崎さんが入ってきましたけど。

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先輩にも褒められた、お気に入りのセリフ

――以前もおっしゃっていましたが、お好きなセリフはナウシカとアスベルの……。

島本 そうですね。「泣いてるの?」「うん……うれしいの……」。あそこは、ミト爺をやった永井一郎さん(※2)が「あれがよかった」って褒めてくださったのが、すっごくうれしかったので。

「うん……うれしいの……」のシーン(『風の谷のナウシカ』より)

 他にもいっぱいありますけど、テトに向かって言う「おいで」も好きかな。あとは、幼い頃のナウシカが「出て来ちゃだめー!」って言いながら小っちゃい王蟲を守ろうとするシーンも好きですね。

「出て来ちゃだめー!」のシーン(『風の谷のナウシカ』のシーン)

※2……『サザエさん』の磯野波平役や『機動戦士ガンダム』などで活躍。2014年没。

――ナウシカの声ですが、客観的に聞いてみてどんな声だと思いますか?

島本 いまは声優になりたくてなった人が多いですが、昔は俳優の仕事の一つとして声優をやっていました。私は俳優の仕事として捉えていたので、声を作って演技をしようみたいな意識はあまりなかったんです。「出て来ちゃだめー!」は幼いナウシカなので、さすがに声を作りましたけど。それ以外では、ちょっと気持ちを若くするぐらいで普通にやっていましたから。

 とにかくナウシカという役を演じることに集中していたので、かわいい声を出そうとか、どんな言い方をしようかなんて考えませんでした。気持ちを作って演技をするというか、キャラクターと自分を一体化させてしゃべらなきゃって。これは、いまもそうですけどね。

 

――「うん……うれしいの……」は泣いているけどうれしいという相反した表情と感情が交錯するシーンなので、気持ちを作って演じるという点でも非常に難しそうですよね。

島本 いまも昔も内面を作って演じるのは苦手ではなかったので、中身ができてしまえばスッと入っていけました。『ナウシカ』は3日ぐらいに分けて収録した覚えがあるのですが、いまと違って先に本編のDVDやビデオを渡されることがなかったので、まず現場に入ったら出演者全員で全編を観て、その後に残った時間でやれるところまで頭から順番で録っていったんです。

 2日目にアスベルと絡むシーンをまとめて収録したんですけど、順録りだったこともあって気持ちも作りやすかったですね。宮崎さんも「この日は、わりと少女らしく自然にできていた」なんておっしゃっていた気がします。