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「やるしかない」状況で、「開き直る」

――まさに、ぶっつけ本番ですね。

井口 そうですね。なので、評判は悪いですよ。お笑い好きな人は、ひとつのネタを何度も何度も舞台にかけて、ブラッシュアップしていくものだという考えの人が多いんでしょうね。「直前に作りましたってなめてるのか。もっと汗をかけ」と。

 ただ、直前にならないと頭が冴えないんですよね。時間があると、「こっちのほうがいいかな、いや、こっちかな」とか切りがないじゃないですか。それで変なこと考えてドツボにハマってしまう芸人もいっぱい見てきたんで。1週間ネタを考えたからといって、ベストなものが出来るわけではないと思うんですよね。直前だと、「やるしかない」って状況ですから、開き直れるんですよね。

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――決勝の舞台でどんなネタをやっているのか、今の時点では誰もわからないわけですね。

井口 なんとなくは、頭のなかで出来ていますけど、決勝の舞台に立つ直前まで、何かムカつく出来事があったら、それをネタにしますね。準々決勝の前もそういうことがあったので、ネタを変えていますから。まぁ、決勝直前に「そんな腹立つこと起きんな!」って思いますけどね(笑)。

M-1の舞台は最高の“ストレス発散の場”

――同じネタを繰り返しやることはないんですか?

井口 もちろん同じネタをやることもありますけど、単純に同じようにできないんですよ。

河本 僕が同じ言い方でセリフを言えないんですよ(笑)。

 

井口 だから、2回目みたら、違う感じの漫才になっていると思います。まぁ、何回も見返したりするような作品みたいなものではないんで。

――M-1決勝戦でやるネタも、その時しか見られないということですね。

井口 そうですね。僕らの漫才は特に気持ちをのせることが一番大事だと思うので、本当に思ってないことを言ってもウケないと思うんですよね。その時に思ったことを言うのが一番ウケると思うんです。何かキャラを憑依させてやるような漫才ではないので、特に本番前にスイッチを切り替えることもない。

よく楽屋で、芸人仲間で集まって愚痴や文句とか言ってるんですが、そのまま舞台でその愚痴の続きを言ってるような感じなんですよ。なので、M-1の舞台は日頃のうっぷんを晴らす最高のストレス発散の場ですよ。

 

河本 僕もこのままの感じでM-1の舞台にあがりますよ。

井口 お前は切り替えてくれ! 声も小さいし、全然しゃべってないんだから!

【続き】「事務所をクビになりかけたことはありました」 M-1決勝進出ウエストランドが振り返る芸歴12年の波乱万丈を読む

写真=山元茂樹/文藝春秋

ウエストランド井口浩之(ツッコミ担当)と河本太(ボケ担当)のコンビ。井口は1983年5月6日岡山県出身。河本は1984年1月25日岡山県出身。中学校からの同級生で、高校で同じサッカー部に入部し、2008年に結成。

新生M-1では16年、17年、19年に準々決勝進出。18年は準決勝進出。20年に所属事務所であるタイタンとしても初となる決勝進出を決めた。