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千葉、晴海、横浜…都心のすぐ近くにある「不思議な廃線」その正体は?

2021/01/11
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 JR千葉駅で降り、千葉都市モノレールに乗り換える。千葉公園駅までは一駅だ。東京モノレール羽田空港線の車両がレールの上を走る「跨座(こざ)式」であるのに対し、こちらはレールにぶら下がるようにして走る「懸垂式」。こちらのほうが未来都市っぽくて断然楽しい……と思っていたら、テレビや映画のロケによく使われているそうだ。ちなみにここは、懸垂式のモノレールでは営業距離が世界最長だという。

千葉都市モノレール。レールにぶら下がるようにして走る「懸垂式」 ©️iStock.com
東京モノレール。レールの上を走る「跨座(こざ)式」はこちら ©️iStock.com

 目指すトンネルは、千葉公園の入り口に近い管理事務所の裏手にあった。狭い駐車場の隅にひっそりと立っている。ほとんど人目にふれない場所で、横には洗濯物が干してあった。

意外と短いトンネル

 奥行きはやはり短く、3、4メートルといったところ。いかにもトンネルらしい四角い形は正面だけで、横から見ると、土管状になっている。写真を見たときはトンネルの輪切りのようだと思ったが、実物を見ると、土管の輪切りにコンクリート板を張り付けたような感じである。

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 公園内にはほかにもコンクリートのクレーン基礎と橋脚が残っている。橋脚は見上げるほどの大きさで、写真を撮っていたら、散歩中の年配の男性に「これは何かの記念碑ですか?」と尋ねられた。地元の人で、ここに鉄道聯隊があったことは知っていたが、この巨大な建造物が何なのかは知らなかったそうだ。先ほどのトンネルには「元鉄道隊演習時構築せる隧道(ずいどう)」、この橋脚には「元鉄道隊架橋訓練跡」と書かれたプレートが取り付けられているが、ちゃんとした説明板がほしいところだ。

旧陸軍鉄道聯隊軍用線は千葉駅のそばにある

 軍用線の跡は残念ながらほとんど残っていない。千葉駅に戻り、総武本線で津田沼駅へ向かった。駅の南側にはかつて鉄道第二聯隊の本営があり、その正門が千葉工業大学の通用門として残っている。

 赤レンガの門柱に、白く塗られた木の扉。クラシックで美しいこの門は、国の登録有形文化財になっていて、立派な説明板もある。

 さっき見てきた千葉公園内の遺構とつい比べてしまった。第一聯隊のトンネルや橋脚は、地味ではあるが、鉄道遺産としても軍事遺産としても貴重なものだ。整備して後世に残してもらえないものだろうかと思いつつ東京に帰ってきた。(2012年12月取材)

@千葉県
[廃止区間]
 都賀―八街―三里塚、四街道―都賀、千葉―津田沼、津田沼―松戸・中の浜など
[廃止時期]
 終戦後
〈昭和20年(1945年)8月15日以降〉
[路線距離]
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