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千葉、晴海、横浜…都心のすぐ近くにある「不思議な廃線」その正体は?

2021/01/11
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明治42年(1909年)に架けられた、横浜臨港線の港一号橋梁。それまで多かったイギリス製のトラス橋に代わり、この頃からアメリカ製が主流となった(横浜臨港線・山下臨港線) ©️梯久美子

 このルートには、「港一~三号橋梁」とよばれる3つの鉄道橋が残っていて、それぞれ横浜市認定歴史的建造物となっている。一号、二号橋梁は明治40年代に架設されたアメリカ製の複線トラス橋で、白く塗られた優美な姿をしている。三号橋梁は北海道の夕張川橋梁を転用したもので、こちらはイギリス製である。

 3つの橋を渡り終えると、新港地区とよばれるエリアに入る。赤レンガ倉庫の間に引込線が残っており、横浜港駅のホームが復元されている。ここからは山下臨港線の廃線跡になる。

横浜赤レンガ倉庫 ©️iStock.com

「鉄道橋ってこんなにきれいなんですね」

 歩き出してまもなく、4つ目のトラス橋があった。大正元年(1912年)製造の「新港橋梁」だ。橋の全景を撮ろうと土手に回ると、カメラを手にした先客がいた。港一号、二号橋梁のところでも見かけた青年だ。

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 同好の士に違いないと思って声をかけたが、鉄道ファンというわけではなく、この橋がもともと鉄道橋だったことも知らなかったという。お節介とは思いつつ、かつてここを列車が走っていたことを説明した。「鉄道橋ってこんなにきれいなんですね」と言われ、自分がほめられたような気分になった。

 橋を渡った先から山下埠頭駅まで、現役時代の線路は高架上を走っていた。現在は「山下臨港線プロムナード」となり、山下公園の入り口まで、港を見下ろしながら線路跡を歩くことができる。汽笛が聞こえ、船の出入りが見える、最高の散歩道だ。

 レールは残っていないので、歩いている人のほとんどは、ここが線路だったとは気づいていない。手すりにもたれて港を眺めるカップルに教えてやりたい衝動にかられたが、ぐっと抑えて思いとどまった。(2012年9月取材)

 @神奈川県
 [廃止区間]
 a:高島駅―横浜港駅
 b:横浜港駅―山下埠頭駅
 [廃止時期]
 a;昭和62年(1987年)3月31日
 b:昭和61年(1986年)11月1日
 [路線距離]
 a:4.3km
 b:2.0km

地図作成=読売新聞社

カラー版 廃線紀行―もうひとつの鉄道旅 (中公新書)

梯 久美子

中央公論新社

2015年7月24日 発売

千葉、晴海、横浜…都心のすぐ近くにある「不思議な廃線」その正体は?

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