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東京湾の風景は変わり続けてきた ©️iStock.com

 豊洲運河沿いは遊歩道になっていて、イーゼルを立てて絵を描いている人が何人もいた。みな運河の上流、隅田川の方を向いている。広々とした運河の先に、隅田川の川岸に立つ高層マンション群を望むここからの景色は、なるほど絵になる。東京を代表する新しい景観といえるかもしれない。

 運河の水面から顔を出した橋台にカメラを向けていると、絵を描いていた銀髪の婦人に「何を撮っているんですか」と声をかけられた。昔ここを鉄道が通っていた話をすると、まったく知らなかったとのこと。3年前、新宿区にあった自宅を売って、豊洲に移り住んできたそうだ。

一角に残るレールの跡

 ビルの谷間を抜けてさらに進む。昔、晴海線が横切っていた敷地には、いま巨大なビルが建っている。ここで働いている人たちも、自分たちのオフィスがかつての線路の上にあるとは思いもしないだろう。

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 交差点を渡ると、いよいよ晴海線最大の遺構との対面である。潮風に赤く錆びた鉄骨が、力強くも優雅な曲線を描く鉄道橋、晴海橋梁。真新しいビル群に囲まれて、往時の姿のまま残っている。レールも枕木もそのままだ。

晴海橋梁は、コンクリート橋と鉄橋をつなげたような変わった形。レールも健在で、独特の存在感を放っている(東京都港湾局専用線晴海線) ©️梯久美子

 渡ることはできないが、すぐ横にかかる春海橋(こちらは「春」の字を使っている)から間近に眺めることができる。東京湾岸の環境が激変する中、変わらない姿をとどめているのはまさに奇跡的。周囲の景色とのミスマッチがまたいい。

 春海橋を渡った先が晴海埠頭だ。アスファルト舗装された倉庫街の一角に、撤去されたレールの跡がかすかに残っていた。(2011年9月取材)

 @東京都
[廃止区間]
 深川線分岐―晴海埠頭
[廃止時期]
 平成元年(1989年)2月9日
[路線距離]
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