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千葉、晴海、横浜…都心のすぐ近くにある「不思議な廃線」その正体は?

2021/01/11

「廃線」ときくと山奥をイメージすることも多いが、鉄道は社会をさまざまな場所で支えているため、じつは都会のすぐそばにも存在している。絶景ともいえる路線から、日常に溶け込んでいる路線まで、廃止された今だからこそ見えてくる「風景」もある。

 鉄道をこよなく愛し、5年かけて全国の廃線跡を踏破した著者が、その魅力を語るロングセラー『廃線紀行――もうひとつの鉄道旅』から、一部を抜粋して転載する。

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陸軍鉄道聯隊軍用線(@千葉県)

 世にも不思議なトンネルの写真を見た。坑門は堂々としているが、奥行きが異常に短く、まるでトンネルの輪切りのよう。しかも、公園のような木立の中に立っている。見た途端、頭の中に「?」マークが点滅した。

かつて陸軍鉄道第一聯隊の作業場だった千葉公園に残る演習用トンネル。中央上部に鉄道聯隊の徽章が見える(旧陸軍鉄道聯隊軍用線) ©️梯久美子

 この写真が載っていたのは、宮脇俊三さんが編者を務めた廃線ファンのバイブル『鉄道廃線跡を歩く』シリーズ(JTBパブリッシング)の新版である、『新・鉄道廃線跡を歩く』(同)の南東北・関東編。千葉県の陸軍鉄道聯隊軍用線を紹介するページである。

 鉄道聯隊の任務は、戦地で兵員や物資を運ぶための鉄道を敷き、車両を走らせること。敵の鉄道を占領したり、破壊したりすることもある。千葉県には、明治41年(1908年)から太平洋戦争終結まで鉄道聯隊が置かれ、演習のための軍用線が通っていた。このトンネルも、演習で構築されたものだという。あり得ないほど短いのは、そのためだった。

トンネルは千葉公園にある

 冬晴れの一日、ずっと気にかかっていたこのトンネルを見に行くことにした。トンネルがあるのは、千葉市にある千葉公園の中。ここはかつて、鉄道第一聯隊の作業場(演習場)だったところだ。