突然、すぐそばから野太い歓声が上がった。
なんだ? とそっちを見ると、私と同じようにやはりチームで唯一の女子社員となった同期のA子ちゃんが隣のチームで自己紹介をしていた。A子ちゃんはぶっちゃけとてもかわいい。
くそっ、この差は何なんだ!?
“イケメンパラダイスでモテモテ紅一点”の夢やぶれた私は、所在なく、チームの片隅に座って督促生活をスタートした。
海千山千の多重債務者たち
私の配属されたコールセンターに所属しているのは全部で60名ほど。クレジットカードの督促を行っている別のコールセンターには、パート契約のオペレーターさんがいたけれど、この部署に所属しているのは全員が正社員だ。
チームに配属されてからは山のような督促表を目の前に積み上げられ、督促の電話をかけることになったのだけれども、電話をかけてみて、なぜここが男子校なのかがあらためてよーくわかった。
「××カードです、ご入金のお願いなのですが……」
「またかよ! ないものはないって言ってんだろ!」
「ええっ、で、でも、お支払いはしていただかないと……」
「うるせぇ!」
ガチャッ!!
かける電話かける電話、みんな怒鳴りつけられて切られてしまう。
怒鳴られないまでも電話をかけるとお客さまはみな支払いが難しい状態で、すんなり「支払います」という人はほとんどいなかった。
(ど、どういうことなの……)
実は、私が担当しているキャッシング専用カードのお客さまは、社内でも特に扱いが難しいとされる方々だった。
キャッシング専用カードというのは、文字通り現金を借りるためのカードだ。クレジットカードのように買い物に使うことはできないが、最高で200万円までの現金を借りることができる。システムはほぼ消費者金融と同じだった。
カード会社のキャッシング専用カードを利用するお客さまには2パターンの人がいる。一つは、クレジットカード会社のほうが消費者金融より敷居が低いからという人たち、そして、もう一つは、消費者金融からも借りられなくなり、仕方なくクレジットカード会社でキャッシングをしている人たち。……当然、督促の部署にまわってくる(つまり支払いが遅れる)のは後者がほとんどなのだ。
今ではお金を借りようと思うと、貸金業法によって年収の3分の1までと借りられる金額の上限が決められている(2010年施行)。けれど、昔はクレジットカード会社と消費者金融は借入の情報を共有していなかったので、消費者金融で何件も借入があったとしてもクレジットカード会社ではそれを把握できず、キャッシングの審査に通ってしまったのだ。