高市氏は旧姓の通称使用に積極的だったはずだが……
高市さんは過去に山本拓衆院議員と結婚していた時期があり、それでも通称として「高市」という旧姓を使い続けてきた。旧姓の通称使用に積極的で、これを法制化することも提案している。夫婦別姓反対派ではあるが、同時に「旧姓の通称賛成派」でもあるわけだ。
ところが番組の議論では、2017年の内閣府世論調査をもちだしてきて「父母の氏が違う場合、子どもに対して良くない影響があるとお答えになった方が62.8%に上っている」という話をした。これも不思議ではないか。なぜなら、もし「子どもに良くない影響」があるのだとしたら、旧姓の通称使用でも同じことが言えるはずだからである。
私はそう思って高市さんに「だったら高市さんは旧姓の通称使用に反対しないとおかしい。戸籍という書類だけの姓の違いよりも、日常で両親が違う姓を使っていることのほうが子どもには影響が大きいはずでは?」「さらに、その論理だと離婚もしちゃいけないってことになりませんか?」といった趣旨の質問を投げてみたが、残念ながら高市さんから明白な回答は得られなかった。
そもそも法や制度をタテにするのは行政的な考え方である。戸籍制度や戸籍法に影響があるのなら、選択的夫婦別姓を否定するのではなく、戸籍制度の側を変えていくことを考えるのも立法府の議員の仕事ではないだろうか。とはいえ、そんなことは国会議員歴の長い高市さんも片山さんもとっくにご承知のはずだ。それでも制度に議論を寄せてきたのは、そこぐらいしかロジックの拠りどころがなかったからではないか。
それでも別姓に反対するのはなぜか?
いっぽうで「夫婦別姓が家族の絆を壊す」という従来の論は、あくまでも感情の問題である。きっちりと整ったロジックはそこには存在しない、と私は考えている。少なくともこれまでの長い議論で、説得力のある論考を読んだり聞いたりしたことがない。
だから私は「高市さんは、実は夫婦同姓には賛成してないんじゃないだろうか?」と感じたのである。ではなぜ別姓に反対しているのかと言えば、これは高市さんはそんなことは絶対に認めはしないだろうが、膨大に存在する高齢者中心の別姓反対有権者層の存在だ。