まあ小林さん(継父〔仮名〕)はそんな悪い人ではなかったので(笑)。(中略)まあ、話をつけてから数カ月来なくなったんですけど、母が(彼の家に)行ったり来たりしてるのを見たりとか、ちょっと母がかわいそうかなっていうのが見てたときにちょっとずつ思い始めて、「ああ、コバヤシくん(継父の呼び名〔仮名〕)、来てもいいよ」っていうのを言ったら、来るようになりました。
このように変わったのは、子どもの気持ちを尊重して大人側がその要求に合わせて、パートナー関係のスタイルを柔軟に変更したからだと思います。実母は継父を「親」として受け入れるよう求めることもせず、関係を無理に縮めようともしていません。継親に「親」としての役割を期待することもありません。呼び方も「コバヤシくん」のままです。
「来てもいいよ」とゴーサインを出してから再び家にやって来た「コバヤシくん」と、成美さんは少しずつ距離を縮めていきます。大けがを負った交通事故のとき、相手方と交渉してくれて頼りになった。対外的には「父親っぽい感じで出てくるときもある」。でも、父親という意識はなさそう……。ふだんは冗談を言ったりちゃかされたりすることもあって、だんだん「ふつうの家にはいない存在と思うとおもしろい」ユニークな存在だと思うようになりました。それに、「コバヤシくん」がそばにいると実母の機嫌がよくなるから、小言を言われそうなときでも怒られなくて済む(「緩衝材になってる」)。いまでは、急に来なくなったらどうしようと思うほどの存在だと言っています。
帰るのが遅いだったりとか、もうちょっとちゃんとしなさいだったりとか、すごい怒られそうだなっていうときに、コバヤシくんがいると(笑)。
美里さんと成美さんに共通するのは、同居親である実母が、子どもの気持ちを尊重し配慮しながら、ゆっくりと継親との関係づくりを進めていこうとしたことにあります。子どもに無理をさせていないのですね。最初から通念的な「ふたり親家庭」に継親子を当てはめようせずに、子どもの反応を見て(あるいは仲介に入った祖父母の意見を取り入れて)、その都度やりかたを変えていく。トライ&エラーを繰り返して、独自の継親の役割、家族のあり方をつくりあげていくようなイメージです。