親の再婚によって継親子関係が生まれた「ステップファミリー」は一般的な家庭に比べて、家族間の関係性が複雑になりがちだ。継親を親と思えない子ども、継子から親として認められたい大人、両者の間に葛藤が生まれ、コミュニケーションがすれ違うことも決して珍しくはないだろう。とはいえ、継親を家族の一員としてみなし、良好な関係を築いているステップファミリーももちろんある。
家族社会学者の野沢慎司氏、菊地真理氏の両氏の調査から、良好な関係を築いているステップファミリーに共通する、ある特徴が見えてきた。ここでは「正しい親」幻想が招いた悲劇を受け止め、あらゆる親子が幸福に生きられる家族の形を考えた書籍『ステップファミリー 子どもから見た離婚・再婚』を引用。再婚後に良好な関係を築けた家族について、具体的なエピソードとともに紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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「おじさん」は、母の夫で、私にとっては相談相手
継子の立場でステップファミリーを経験した人たち(若年成人継子)19名へのインタビュー調査のなかで、継親を「親」とみなさずに関係をうまく発達させたケースがありました。(*1)4ケースと少数ですが、継親を「親」ではないけれど自分の「家族」の一員であるとみなしています。なぜそのような認識をもつことができたのでしょうか。
*1 野沢慎司・菊地真理「若年成人継子が語る継親関係の多様性―ステップファミリーにおける継親の役割と継子の適応―」明治学院大学社会学部付属研究所『研究所年報』44巻、2014年、69~87頁
美里さん(20代後半・女性)は実父とは死別したあと、小学校高学年のころに実母から「同級生」だと継父を紹介され、一緒に遊びに行くなど交流がはじまりました。中学生になると継父が近所に引っ越してきます。そして成人してから美里さんたちが住む家の隣に住むようになります。実母と継父は入籍しておらず、美里さんは継父と同居したことはありません(食事も別々です)。美里さんの実母はふだん子どもたちと一緒に過ごし、ときどき継父の住む家に泊まりに行くというかたちでパートナー関係を維持しています。
実母は十分な経済的収入を得ているため、自分の生活費や子どもの教育費などを夫(継父)に依存することもありません。そもそも継父に対して、父親として子どもたちに接してほしいという期待をしている様子もなく、呼び方も美里さんやその兄たちの自由にさせています(「ウッチー」というあだ名や「おじさん」と呼んでいます)。美里さんには兄がいるのですが、継父とは「飲み仲間」でフラットな関係であることが読み取れます。継父に対する当初の印象は「母の新しい再婚相手」というもので、「母の夫」だけれども「私の父ではない」という気持ちを現在まで持ち続けています。友だちにも実母の「彼氏」と紹介します。
死別した実父の話題が継父を含めた家族内で出ることもあり、継父も交えて実父のお墓参りにも行っています。つまり、美里さんの家族史に起こった出来事を家族全員で共有しているため隠し事(タブー)がありません。再婚以前の経験や別居親(もうひとりの実親)の存在をタブー視していないところも、前編でとりあげた継子たちの事例と異なっています。