下川島を紹介する日本の書籍も存在した
下川島での買春行為を紹介する日本語の書籍すらあった。たとえば2009年7月、オークラ出版から刊行されたガイドブック『香港マカオ夜遊びMAX』(ブルーレット奥岳著)は、メイン地区である王府洲旅遊区のマップ付き(置屋だらけである)で、下川島を8ページにわたり特集している。
当時、事実上の性産業特区となっていた王府洲旅遊区へは入場料40元が必要だった。同書が紹介している旅遊区内の様子は以下のようなものだ。
ショートで遊べば、事が終われば女のコは帰って行きますが、ゆっくり休ませてくれるほど甘くはありません。女のコを帰して1~2時間も経たない内に別の女のコが部屋に襲来! 遊んでくれるまで帰ってくれません。この波状攻撃を避けるには、女のコを帰したらスグに外出するしか手はないのですが、外出したら外出したで、今度は町中にある置屋の女のコたちの熱烈歓迎に翻弄されることになります。食堂へ行けば女のコたちに囲まれながら食事をするハメになりますし、道を歩けば腕を引っ張られる。海辺の遊歩道へ逃げ込んでもどこからともなく女のコたちが集まって猛アタックされてしまいます。(略)とんでもない島に思われるかも知れませんが、男にとってこの強引さは、至福の時でもあるのです。
媒体の性質もあって「熱烈歓迎」ぶりが強調されている。ただ、実際のところ日本人客は言葉が十分に通じないうえ、チップの支払いに吝(しわ)いこともあって、置屋のママやセックスワーカーの女性からは台湾人客に対しておこなっているような女性の長時間ブッキングが嫌がられる例もあったようだ。
「時間と心の余裕がある人向けの場所ですね」
3ページ目の写真を提供してくれた、海外性風俗ブログ運営者の「まりりん」氏は2013年、留学先の香港から下川島を訪れている。「当時の時点ではショートが300元でロングが600元。一応はロングが基本なのですが、言葉が通じにくいなどして相手との相性が悪い場合は、途中で帰られてしまうこともありました。日本人が、性行為だけを目的にして行く場合は微妙だったと思います。開放的な雰囲気の島で、プロっぽくない中国の田舎の女の子と食事をしたり海で遊んだりすることも楽しめるような、時間と心の余裕がある人向けの場所ですね」
実際に島に行ったとみられる日本人のインターネット上の体験談を読んでみても、わざわざ時間と交通費を使ってまで下川島に行く意味があるのかを疑問視している意見が少なからず見られる。もともと、下川島の性産業は同じ中華圏の台湾人中高年のライフスタイルに合わせて発達してきたので、日本人との相性は必ずしも良くなかったようだ。
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※本記事の著者の安田氏の新著、有名女優チャン・ツィイーの枕営業疑惑から中国大陸のキリスト教弾圧まで切り込む『現代中国の秘密結社』(中公新書ラクレ)は現在発売中、群馬県のベトナム人豚窃盗問題と技能実習生問題の真の闇を暴く『「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本』(KADOKAWA)は2021年3月3日刊行予定です。