今年で14歳、湖南省から来た少女のティンティンは、おそらく下川島で最も若い妓女である。十数センチのハイヒールを履き、ティンティンは一日中海辺に立って客を引き暮らしている。
ティンティンは下川島に来てまだ半年あまりだ。同郷(の女性)から、村の外で働き口があると言って騙されてしまった。果たして、彼女は故郷を後にして、車に乗り船に乗り、下川島にやって来てからはじめて「小姐(シャオジエ[売春婦])」になることを知ったのだった。当時13歳だったティンティンは身体の成長も十分ではなく月経すら来ていなかったが、ある台湾人の老人に4000元(当時のレートで約6万円)で「水揚げ」されることになった。
その後、(彼女を騙した)同郷(の女性)にお金をすべて持ち逃げされ、ティンティンは故郷に帰ることもできなくなり、島で小姐になって交通費を貯めるよりほかなくなった──。だがしばらく経つと、ティンティンは非常にカネが稼げることを知り、なんと故郷に帰りたいとは思わなくなってしまった。
記事中では、中華民国陸軍の元将校という80代の外省人の老人が、17歳の中国人少女の手を引いて歩いていた──、といったグロテスクな光景も紹介されていた。この老人は負け戦に終わった往年の国共内戦に参加してから約半世紀後、買春ツアーに参加して大陸を再訪し、「共産中国」の貧しい少女を連れ歩いていたわけだ。
日本人、襲来
やがて2010年前後になると中国経済が成長したこともあって、下川島の様子はゼロ年代前半ほどメチャクチャではなくなり、ファミリー向けのビーチリゾートとしての開発も進みはじめたが、それでも売春島としての顔は消えなかった。かつては台湾人の中高年男性だけの秘密の園だった島に、日本人の姿が目立ちはじめたのもこの頃からである。
「いちばん好色なのは日本人客だ」
たとえば香港紙『東方日報』の記事(前出)は、2010年秋に広州アジア大会の開催を控えた広東省中心部の売買春摘発政策を受けて、広州や深センで性産業に従事していた女性が下川島に流れ込んでいると報じつつ、来島する日本人男性たちの様子をこう書いている。
台山の上川島・下川島はかねてからずっと台湾と日本のセックスツーリストの天国であり、毎日島にやってくる台湾や日本の旅行客は100人を下らず、フェリーから下船するやすぐにグループを作ってお楽しみを探しに出かける。
現地で性産業に従事する女性いわく「女性を目的に島に来るのは中年の台湾人男性が最も多く、それに日本人客が次ぎ、香港人はここしばらく減っている。ただ、いちばん好色なのは日本人客だ」という。
言葉が通じないことから、日本人客は気に入った女性がいるとすぐにたどたどしい中国語で「ヅオアイ、ヅオアイ」(注・性行為を意味する中国語)と話し、それから会話帳を取り出して、専門用語に指差しをおこなって料金の条件を交渉するという、非常に慣れた行動をおこなう。