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2021/01/17

source : 文春文庫

genre : エンタメ, 読書, 社会, 働き方

 ただでさえ督促の仕事は女子力が急低下する。

 女の子は「かわいい」とちやほやされて輝く生き物なのだ。毎日お客さまの罵詈雑言を浴びてキラキラしたオーラなんか出せるか!

 そして、夏の終わり頃、確実に低下していく女子力と、一向に戻ってこない返信メールにとうとうブチ切れた彼氏に「俺と仕事とどっちが大事なの!?」とフられてしまった。

「お、落ち着いて!」「そんなの選べないよ!」と必死で取り繕ったけどもう遅かった。

 その頃私はコンビニパンツが家にあふれたため、紙パンツ生活に突入していた。これではまぁ、彼氏どころではない。「紙パンツをはいた女は、フられても仕方ないよなあ……」

 私は妙に納得し、人知れず涙を流した……。

サークルのOB会で

 しかし私は、自分がこんな惨状に置かれていても、まだ希望を捨てていなかった。

 新入社員はきっと多かれ少なかれみんな大変に違いない。この大変な時期を乗り越えて、立派な社会人になっていくのだ。今は社会人になるための関門に違いない。

 そんなことを自分に言い聞かせながら仕事に耐えていた入社1年目の夏、私はサークルのOB会で卒業以来会ってなかった大学時代の友人と久しぶりに会うことになった。きっと、同級生たちもみんな大変なはず。みんなで仕事の愚痴を語り合えるに違いない。

 席に案内された私を見て、先に来ていた友人たちが、叫んだ。

「だ、誰!?」

「……え? N本ですけど……」

「ぎゃーっ、どうしたの??」

 学生時代の友人たちは私を見て目を見開いた。

「なんか、体が半分くらいになってる!!」

「顔が酷いよ! 頬が、頬がこけてるよー!」

 入社して数カ月、仕事のおかげで私の体重はめでたく10キロ減っていた。

 そして、そんな人は他に誰もいなかった……。

キラ星のような同期たち

 私は大学時代、あまり顔を出してはいなかったが推理小説研究会というサークルに所属していた。卒業して1年目のOBとOGはOB会で先輩方に挨拶をするのが慣例だったので、幽霊部員だった私にもかろうじて声がかけられた。

©iStock.com

 ちなみにこのサークルはOBに直木賞作家がいたりする歴史あるサークルだった。卒業生は出版社やテレビ局などのマスコミ業界に進む人たちも多い。そのOB会は200人ほどのOB、OGが参加し、ホテルの高層階にあるラウンジを借り切って行われていた。

 なんか場違いなところに来てしまったなぁと居心地悪く感じていた、その時だった。

「今年度のOB、OG1年目の方は前に出てください」

(!?)

 突如私たちは壇上に上げられ、就職している会社を発表させられることになってしまった。こんなの聞いてない! 私は青くなった。

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