「人見知りで話しベタで気弱」を自認する新卒女性が入社し、配属されたのは信販会社の督促部署! 誰からも望まれない電話をかけ続ける環境は日本一ストレスフルな職場といっても過言ではなかった。多重債務者や支払困難顧客たちの想像を絶する言動の数々とは一体どんなものだったのだろう。

 現在もコールセンターで働く榎本まみ氏が著した『督促OL 修行日記』から一部を抜粋し、かつての激闘の日々を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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自分の身は自分で守る

 新入社員には、たいてい教育係がつけられる。業務も環境も非人道的なコールセンターに配属されてしまった私にも、一応教育係としてひとつ上の先輩があてがわれていた。

 名前をS木さんといった。

 教育係と言っても、私は1年浪人して大学に入っているのでS木先輩は同い年だ。色白で細身、ちょっぴり冷たそうな印象のメタルフレームのメガネの奥の、意外に整った顔立ち……。

 ぶっちゃけると、大変好みです。本当にありがとうございます。配属早々、私は“キター!”とテンションが上がったものだった。

 ところが。

「N本さん、この電話出てみて」

「あ、はい。なんですか?」

 隣の席に座るS木先輩からいきなり受話器を手渡された。差し出されたモノは反射的にほいほいと受け取ってしまう私。

マシンガンのように飛び出す罵声

「あ、その電話ね、すっごいクレームになってるから、ホントにダメだったら代わってあげるから頑張ってね」

 先輩はそう言うとブチッと電話機の保留ボタンを押して解除した。

(な、なんだってー!)

 文句を差し挟む暇もなく、受話器からは張り裂けんばかりの怒声が大ボリュームで響いてくる。

©iStock.com

「馬鹿野郎‼ いつまで待たせるんだ! いきなりカードが使えなくなったじゃねぇかよ。店で恥をかかせやがって!!」

「も、も、も……申し訳ございません!」

 マシンガンのように飛び出す罵声に私はわけもわからず謝り倒す。結局そのクレームを収めるために、私は電話口で1時間以上怒鳴られ続けなければならなかった。

「なんでクレームの電話を私が代わるんですかー!?」

 汗だくで電話を終わらせると、S木先輩が隣で何事もなかったかのように督促の電話をかけていた。普段あまり目上の人やイケメンに反論できない私でも、さすがにこれは腹が立って抗議した。

「あ、電話終わった? どうだった?」

「終わったじゃありませんよ! クレームを押しつけるとかどういうことですかー!?」

「いやぁ、そろそろクレーム対応の一つも覚えてもらいたくて」

 まったく悪びれずにそう言うS木先輩。

 もちろんわからないことは質問すればちゃんと教えてくれたけど、「いいからやってみろ」と色んな難しいお客さまを丸投げするのがS木先輩の教育方法だった。冷たいのって嫌いじゃないけど、もうちょっとだけかまってほしい!