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「仇を討ちたいと思います」

「会いたかったぁ……、会いたかったけど……でも、間に合わなかったぁ……」

 午後の3時前後に、夫からの電話が入る。娘が死亡したから、すぐに築地警察署に向かうようにとのことだった。

「頭が真っ白で、あとのことは何も覚えていません」

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「電車に乗っても、電車が動かない。それで、ホームから出て、どこをどう歩いたか、行ったり来たりで、まわりの人を見て、やっと道に出ました。そこで、タクシーをつかまえて乗りましたが、車も渋滞で動かない。それで、降ろしてもらいましたが、それでも、右か左かもわからずに、分離線(センターライン)の上を走っていました」

 それからようやく着いた築地警察署の地下の霊安室で娘と再会する。

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「冷たい冷蔵庫に棺のまま……、なぜ入れられているのか、信じられませんでした。さわろうとしても、ビニールの中で、手で触れることもできずに……」

「いっしょに帰ろうとしても、確か、解剖されてからでないとダメだと……。なぜ、されるのか、生きているうちに傷つけられたこともないのに、悔しくて……」

 その時の気持ちを、検察官が尋ねる。

「犯人がいたら、私の手で……すみません……仇を討ちたいと思います」

 もはや、途中から声にならなくなっていた。

 やがて、遺体となった娘が自宅に帰ってくる。

「棺をめくると布団に入っていましたが、素っ裸で、生傷が耐えられませんでした。振袖を着せて、棺に入れて……悲しくて堪りません。犯人が憎くてなりません」