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「春菊天そば」(450円)と「いなり」(120円)

 さっそくつゆをひとくち。沁みる。沁みわたる。出汁がじんわり利いた、きれいなムラサキのつゆがたまらない。小雪の中を散歩していたから、なおさらである。麺は大手製麺所の茹で麺で、これもよい。春菊天はかき揚げ「ソフトタイプ」で、しっとりとつゆになじむ。話をするのも忘れて食べ進んでしまった。

「ソフトタイプ」の春菊天がのったそば、寒さにつゆが沁みわたる

 

じんわりと沁みる春菊天

「もともと、このあたりの十中通りは昼、営業している飲食店がないので、自転車もあまり通らないのですが、お店ができてから、見ていると通り過ぎた自転車が戻ってきて店内をのぞき込んだり、その後、食べに来てくれたりという具合に、お客さんに少しずつ認知されてきている」と瓦井さんは言う。

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店内でも食べることができるお弁当

 厨房をみてみると、コロッケや唐揚げなどもたくさん揚げて用意されていた。瓦井さんに聞いてみると、その答えがまた面白い。「お惣菜として買っていく人が多い」という。そんな理由から、親子カフェで作っていたメニューもお弁当として昼に出すようにしたら、好評で意外と注文が多くなっているという。お弁当はテイクアウトだけでなく店内でも食べることができるという。よいアイデアだ。

親子カフェで作っていたメニューもお弁当として昼に出したら好評になったという

 最後にコロナ禍での思いを聞いてみた。すると、瓦井さんは静かに話し出した。

「これからどうなるか、わからないですよね。不安です。でも、できることから少しずつ改善して、チャレンジしていきたい。麺もいろいろ試行錯誤していますし、メニューももっと増やしていきたい。確実にゆっくりと…」

 噛みしめるように、不安を払拭するように思いを語ってくれた。

 

店頭にあるたぬきのマスコットがなかなか可愛い

 瓦井店主は明るさを絶やさない根性のある青年だった。「そば三」は奥さんとともに切り盛りする家族経営の小さな店だが、そば屋のなかった仲池上地区に、新たなコミュニティを築きつつあるようだ。これからが楽しみな店である。また、訪問しようと思う。今度はミニカレーセットを食べようと思う。

写真=坂崎仁紀

INFORMATION

「そば三」
住所:東京都大田区仲池上1-17-10
営業時間:平日11:00~19:30
      (ラストオーダー19:00)
     土 11:00~15:00
      (ラストオーダー14:30)
定休日:日祝
(営業時間はコロナの為変更する場合があります)