主犯のメンバーには死刑が言い渡された
中国国内の他の報道によれば、全能神の信者である6人の男女がマクドナルドの店内で客たちに無差別に電話番号を聞いてまわり、それに応じなかった被害者女性(37歳とする報道も多い)を、突然「邪霊」であるとして撲殺したとされる。犯人グループの主犯格は50代の男・張立冬で、さらに彼の娘の張帆と張航、息子の張某(未成年)、女性の呂迎春、張巧聯らであった。
逮捕後、張立冬は自身が過去7年来の全能神の信者であることを認め、国営放送CCTVはその証言を大きく報じた。他のメンバーが全能神の書籍を読んでいたことも明らかにされた。その後、裁判を経て2015年2月に主犯の張立冬とその娘の張帆に死刑が執行され、残る成人三人にも終身刑を含む懲役刑が下された。
当局の「邪教」摘発キャンペーン?
もっとも、事件については中国国内メディアの報道をベースにせざるを得ず、情報に強いバイアスがかかっている可能性がある。念のために別の見解も紹介しておこう。
たとえば、全能神に好意的な姿勢で知られるイタリアの学術団体CESNUR(新宗教研究センター)の雑誌『The Journal of CESNUR』に論文を寄稿しているアメリカやオーストラリアなどの宗教学者たちは、張立冬ら犯人グループの正体について「全能神の元信者」「全能神を名乗った別の教団の信者」といった当局発表とは異なる見立てを発表している。同じくCESNUR系で中国国内の宗教迫害ニュースを専門に扱っているウェブニュースサイト『Bitter Winter(寒冬[ハンドン])』(日本語版あり)も、事件について全能神無罪説を主張する記事をしばしば掲載している。
もちろん全能神の教団自身も、事件の犯人は自分たちの信者ではないと主張している。確かに、犯行グループのメンバーに「神の化身」を称する女性二人が”本当に”含まれていたことは、全能神の教義(本書中で詳述)とは矛盾があるように感じなくもない。