文春オンライン

土下座させた動画をネットに投稿…自らの罪を世界中に晒す「バカッター」が後を絶たない理由とは

『生身の暴力論』より #2

2021/01/26
note

キレる店員

 動画の内容は二つに分かれている。

 シーン1・コンビニエンスストア内で、カウンター内の店員と加害者側が(逮捕者は4人だが、動画では3人のように見える)口論しているシーン。

 シーン2・コンビニエンスストアの事務所らしき場所で店員とそのオーナーと本社社員らしき人物が加害者側に土下座をして謝罪しているシーン。

ADVERTISEMENT

 まずは「シーン1」。

 舞台は深夜のコンビニエンスストア。動画を見る限り、3、4人と思われる男女が入店した。ネット上ではDQNという単語で彼らを表現しているが、ここではなるだけそういった先入観を排除して考察したい。

 そこで何らかのトラブルがあったのだろう。動画では、店員がキレているところから始まっている。「金を払わんでいいから帰れ」と怒鳴っているが、店員がここまでキレるのも珍しい。キレる理由として考えられるのは二つ。店でかなり騒がれたのか。それとも店員が元々キレやすい性格なのか。

 一瞬だが、女性が缶コーヒーか缶ビールをフタが開いた状態で持っているシーンを確認できる。つまり客が、店内で飲食をしていた事になり、やはり原因は加害者側にあったのではないかと考えられる。

©iStock.com

 しかし、それは店員が「キレる」ほどの行為なのだろうかとも思う。客にキレるにはそれなりの理由があるはず。例えば、もし注意しても聞かなかったのだとしたら、店員がキレるのも分かる。あるいは態度・言葉遣いといった事も要因だろう。

 いくら、正論を言っていても「言い方」「態度」で、事態は大きく転換する。人間対人間の関係はそういうものだ。人間には「情」があり、それはこういった「場面」においては、好転するのかしないのか、重要なファクターになる。

「お前、頭悪いんか」

 レジカウンターにはいくつかの商品が置いてあり、加害者側は「払う」と言っているが、店員は「客じゃないから払わないでいい。帰れ」と強硬姿勢を崩さない。また、加害者が動画を撮っている事にも腹を立て「撮るな」と抗議する。

 加害者も「金は払う。こちらは客だ」と一歩も譲らない。事態が一変したのは、店員の「お前、頭悪いんか」という一言だ。この言葉があってもなくても、いずれにせよ暴行を加えていたと思うが、トリガーにはなったようだ。この一言の後、客の女性が怒声を上げて殴りかかったか、持っていた飲料水を店員に投げた。もみ合いになり、「シーン1」の動画はそこで停止する。