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土下座させた動画をネットに投稿…自らの罪を世界中に晒す「バカッター」が後を絶たない理由とは

『生身の暴力論』より #2

2021/01/26
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自分の愚行をツイートで晒す

 2013年9月3日、衣料品チェーン「しまむら」苗穂店で、主婦が従業員にクレームをつけ土下座をさせた。この様子を写メで撮影し、ツイッターにアップ。ネット民が騒ぎ「強要罪」で逮捕された。土下座の静止画をアップしただけで逮捕されるという前例があった訳だ。これら、自らの愚行をツイートで晒してしまう人は「バカ」と「ツイッター」を併せた造語、「バカッター」と言われている。

 先に挙げたケースは静止画(写真)ではなく動画のアップだ。動画の方が情報量が多い。つまり動画ではどちらに非があるのか、より分かりやすいと言える。案の定、アップされた時から、時間を置かずして、ネットユーザーたちにこの動画は拡散され、アップ主たちに対する非難が始まり、身元の特定作業が開始された。

©iStock.com

 なお、身元の特定は、ネットで育った世代で「勘」が鋭い「鬼女」と呼ばれる女性たちの得意技である。「鬼女」は「既婚女性」を意味する「既女」にひっかけた言葉であり、2chの「鬼女板」の住民たちを指す。彼女たちによる身元特定作業から、ネットでさまざまな案件が炎上するケースが多い。ちなみに、僕の周りに鬼女はいるが、鬼女板は怖くて一度も見た事がない。

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「コンビニ土下座」の一部始終

 多少でもネットに詳しい者なら、「コンビニ土下座の動画アップ」の件は、炎上するのが推測できるはずだ。彼らアップ主たちは、そういった事を念頭に置かなかったのだろうか。加害者ではなく、その仲間がアップしたとも言われている。自らの罪を世界中に公表しているようなものであり、なぜこのような愚行に走ったのか理解に苦しむ。

 一つ、説明をつけるとしたら、彼らは「愚行」と思っておらず、「相手を屈服させた」という高揚感が、自分たちの取った行動は法律に触れているか否かという正常な判断を誤らせたのだろう。高揚感と引き換えに、自分の人生を誤らせるケースをここでも見る事ができる。

 これが10代の小学生から高校生ぐらいまでの少年少女の行動なら、百歩譲って分からないでもないが、30~40代の大人の行いであるため、ネットユーザーたちからより非難を浴びてしまった。

 事件の概要は一部メディアで報道されているが、ここでは暴力動画をテーマにしているので、動画から事件の解説を試みたい。この事件から、人がなぜ安易に暴力に走るのかを突き止めてみよう。