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「時間の問題だとわかっていました」異端の風俗雑誌編集長が明かした「エロ本、最後の戦い」

最後のエロ本編集者たち――ミリオン出版「俺の旅」生駒明編集長 #1

2021/01/24

 ここにいたら未来はない、お先真っ暗、人生をやり直したい。そんな思いから、なんとかして現状から逃れようと必死で勉強し、実家から遠く離れた地方の大学へと進んだ。

©️iStock.com

 だが、絶望的な閉塞感の中で息を殺して生きる日々が続く。学生時代は抗うつ剤を飲むほど自分の無力感に打ちひしがれていた。やっとの思いで大学を卒業後、新卒で就職できずに塞ぎ込む。希望、恋人、お金、友達、車……など、すべてを無くしてから、再起を期して就職した編集プロダクションで出会ったのが“風俗記者”という天職だった。

 何かから逃れるようにわき目もふらず一心不乱に仕事をした。不器用な男である。一点集中、世間ズレしていた部分もあってか、周囲からバカにされたこともあったが、そのたびに身を助けてくれたのは風俗だった。

 いい風俗を知っていることで周囲に認められ、愚直に地道な取材を重ねることで取引先の出版社からスカウトを受けた。頑張れば頑張った分だけ、社内での評価は上がり、読者からは感謝され、編集長にも出世した。思うようにならず、生きていることが辛くなった夜には、たとえそれが商売だとわかっていても、ぬくもりを得ることで明日を迎えることだって出来た。

「時間の問題だとわかっていました」

「そう。僕の人生は風俗によって助けられたんですよ。風俗があったから生きてこられた。本気で思っています。だから『俺の旅』はただの本じゃないんですよ。僕の半生を注いだ、僕の分身。僕の妻であり、僕の子供。

 だからと言ってね、僕はエロ本撤退の沙汰を決めたコンビニ業界に感謝こそあれ、恨みなんてないんですよ。ええ。殺されるのはね……寿命。遅かれ早かれこうなることは時間の問題だと皆わかっていましたから」

 休刊の直接的な原因は、2019年の春、セブン-イレブンを皮切りに、主要コンビニエンスストア各社が夏を目途に成人向け雑誌の販売取りやめを決定したこと。コンビニへの配本が9割という「俺の旅」が、販路という命脈を絶たれた以上、生き残る術はなかった。

「風俗雑誌が時代のニーズに合わないことも、女性や子供の目に触れさせたくない理屈もわかります。反対派の意見もまったくその通り。意見する気もありません。ここ数年の紙のエロ本は、社会という刀にバッサリと斬られ、血まみれでのたうち回りながらも土俵際で粘っていただけです。ここまでよくやりましたよ。数字的には2010年頃からずっと右肩下がりでいつ死んでもおかしくない状態でしたから、コンビニ撤退の決定で会社は即断でした。