彼らのことを思うと休刊は本当に残念ですけど、悲観はしていない。いいですか。覚えておいてください。『俺の旅』は一度死にますが、必ずや復活するでしょう。世の中に伝えたい。『俺の旅』はあなたたちを見捨てやしない。何があっても大丈夫だ。決して悲観することはない。俺が救ってやる。世の中はそんなに捨てたもんじゃないと僕が伝えてあげたいんです」
イエス=イコマの預言と共に禁書扱いで磔にされた「俺の旅」は、2019年4月10日発売号をもって休刊となった。その編集後記には1Pにわたる編集長イコマ師匠からのメッセージが掲載された。
何かが終わるということは、何かが始まるということです。俺の旅はこれから時代に合った新しい形に生まれ変わります。(中略)皆さま少々お待ちください。長期間持続可能なメディアに変身した俺の旅を楽しみにしていてください。
「GoogleやAppleに並ぶ世界企業にしたい」
この休刊は、奇しくも延命のために10年近くもの間“社会”という形に自らを押し込み擬態していたイコマというモンスターを解き放った。その思想は世界を変えるのか、それとも外気に触れた途端死んでしまうのか。
「何度倒されても、『俺の旅』は何度でも復活してみせます。そこに性欲がある限りね。今までの15年間は助走期間。これからがガチンコの本番です。1000年続けますよ。会社を辞めても、僕が死んだとしても、魂たちが寄り添い続いていく1000年企業の礎、風俗における徳川幕府のような仕組みをこれからつくりたいんです。当面は紙の雑誌での復刊を目指しますが、まずはデジタルでの展開を本格的に進めていきたいですね。現実は厳しいけど、ぜひ一緒にやりましょう」
「俺の旅」をGoogleやAppleに並ぶ世界企業にしたいんです――。そう言って差し伸べられた手を前に、どうすることもできなかった。頼るものは人の性。ビジョンも現実感も突拍子もない、あまりにも雲を掴むような話だ。この独立はイコマにとって人生を賭けた関ケ原なのだ。昔の自分のような人生を悲観する人、愛を乞う人たちに、旗の下へ集えと呼んでいる。“あたたかい家庭のような場所を作りたい”というイコマの情念がほとばしっていた。
2019年6月。いいフーゾクつくろうイコマ幕府。
志はある。
そこでしか生きられない人たちのために――。
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時代の中で休刊に至った「俺の旅」……。逆風の中で迎えた2020年、世界中を襲ったコロナ禍の波が、容赦なく襲いかかった。そのとき、“イコマ師匠”は――。(後編に続く)