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「時間の問題だとわかっていました」異端の風俗雑誌編集長が明かした「エロ本、最後の戦い」

最後のエロ本編集者たち――ミリオン出版「俺の旅」生駒明編集長 #1

2021/01/24

 何年も前から「日本のエロ本はこのオリンピックで絶滅する」と言われてきた。実際に日を追うごとに媒体は消えていき、2019年の夏にはほとんどのコンビニから一掃された。

 エロ本はもはや虫の息である。

 本連載は、社会人として最初に足を踏み入れたのが「エロ本業界」だった筆者が綴る、その終わりに最期まで身を置いた関係者たちの“今”であり、その最後の闘いの記録を遺すものである。

「故郷」は今、燃え落ちようとしている。

2019年の夏にはほとんどのコンビニから成人向け雑誌が一掃された ©️iStock.com

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「状況は相変わらず厳しいです。ただ、まだまだ終わらせませんよ。『俺の旅』は、俺の人生。『俺の旅』=生駒明なんです。一昨年、休刊という死刑宣告を受けましたが、夫唱婦随。やつが死ぬなら俺も死ぬ。俺も一緒に海に入るつもりでした。そう。天に召されたのち、一緒に生まれ変わろう……あの時は、そんなことを考えていたと思います」

 2019年4月10日、一冊のエロ本がその役目を終えた。

「俺の旅」(大洋図書)

 2003年7月の創刊から15年9ヵ月。現場の体験ルポをこだわりとし、日本全国の風俗・裏風俗を慈しむように行脚してきた異端の風俗雑誌。その編集長を14年もの間務めてきたのが、“イコマ師匠”こと生駒明氏である。

生駒明氏

 エロ本業界で、彼が“師匠”と呼び親しまれる所以は、おそらく日本一ともいえるその風俗取材に基づく情報量だろう。筆者は旧くからイコマを知っているが、彼ほど傷だらけになりながらも、風俗に一途であり続けた人間を他に知らない。誰よりも風俗へ通い、風俗を愛し、風俗に殉じた末に同化していった彼を、周囲は「歩く風俗案内所」「夜の水戸黄門」「18禁のレインマン」などとからかい半分で呼んだ。

 イコマは孤独だった。

 大家族の三男坊。壮絶な家庭環境だった。高校生のときに割れた瓶で腕を刺された。