コロナの影響で、映画館を訪れる客が少ないせいか、映画館のロビーはがらんとしていて、チケット窓口も閑散としていた。
しかし、「鬼滅の刃」上映10分前を知らせる案内がディスプレイに出ると、押し寄せたファンたちが、入場のために長い列を作り始めた。
男女比は6:4くらいで男性が少し多い印象だ。年齢層はほとんどが10代から20代に見えた。特に、冬休みを迎えた高校生らが最も多く目についた。
列に並んでいたソウル江北区(カンブクグ)から来た男子高校生3人組は、「自分たちは『鬼滅の刃』の熱血ファンです」と語った。クラスメートだというこの3人はもともと日本の漫画が大好きだそうだ。
「『鬼滅の刃』はとても人気があって、クラスメートの間でも有名。私たちは漫画だけでなくアニメも何度も観て、日本で劇場版が作られるという話を聞いた時からすごく長い間待ってきました。一緒に観に来たいと思っていた友達はもっといたんですが、私たち3人しかチケットが取れなくて……。一般公開されたら、他の友達も誘ってまた観に来ます」
煉󠄁獄のコスプレで着飾った男性も
映画配給会社のSNSで試写会を知ったという女子大生は、コロナ発生以来映画館を訪れたのは今回が初めてだという。
「インターネットで毎日『鬼滅の刃』を検索しています。そうしているうちに試写会のニュースを知りました。友達はコロナのせいで映画館に来るのを嫌がるので、恥ずかしいけど1人で観に来ました。1人で映画を観るのは『鬼滅』が初めてです」
この日、出会った最も印象的な観客は、劇場版の主な登場人物である煉󠄁獄杏寿郎のコスプレで着飾った20代の男性だった。
ソウルから車で2時間30分も離れている忠清南道・大田に住む会社員の彼は、この試写会のために休暇を取って1泊2日の日程でソウルを訪れた。COEX館での試写会が終わると、近くのゲストハウスに宿泊し、明日はさらに2カ所で試写会を観た後、夜遅くバスに乗って大田に戻るという。
終盤、あちこちからすすり泣く声が
筆者は午後2時40分に始まる2回目の試写会を鑑賞した。映画が始まる前、試写会だけの特典映像として、主演声優たちが韓国のファンに贈るメッセージが上映された。
「皆さん、全集中! 竈門炭治郎役の花江夏樹です」「韓国のファンの皆さん、こんにちは! 禰豆子役の鬼頭明里です……」
「いつも鬼滅の刃を愛してくださる韓国のファンの皆さん、チェミッケパジュセヨ(楽しんでください)!」
声優らのメッセージが終わり、いよいよ始まった映画は、穏やかに始まったかと思ったら、いつの間にか激しいアクションが繰り広げられ、目が離せない速い展開が続いた。
観客たちは物語に吸い込まれたようで、映画館内は息を殺したような静寂が流れた。