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 しかし、映画がクライマックスにたどり着くと、あちこちからすすり泣く声が聞こえてきた。メガボックスのホームページに、関係者の「嗚咽した」という感想が紹介されていたが、おそらくこのあたりのことのようだった。

友達には映画を勧めることはできないけど……

 やがて映画が終わって席を立つ観客にインタビューを試みた。

 今はコロナの影響で仕事を休んでいるという20代の女性は、日本文化が好きで、日本旅行が趣味だという。「鬼滅の刃」では、自分の好きな日本的なイメージがたくさん見られてよかったという。

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ソウルの駅に展示されたポスター(韓国SMGホールディングス公式Facebookより)

「弱者を守ることが強い者の使命という煉󠄁獄のメッセージが胸に響きました。特に、甘い夢の中にとどまらないで、目を覚まして前に進んで現実とぶつかりなさいというメッセージは、コロナでショックを受けた私の心も慰めてもらった気がします」

 しかし、彼女は、友達には映画を勧めることはできないと話した。

「周りの友達は日本の不買運動にも熱心だし、日本のアニメに対する偏見もあります。炭治郎の耳飾りが旭日旗に似ているという話もあって、さすがに友達には勧められません。しかし、私は一般公開したら、また観に来るつもりです。とにかく最後の曲がとてもよくて、それを聴くためにも3、4回は観たいと思います」

 韓国のネット界では、「炭治郎の耳飾りが旭日旗に似ている」と大騒ぎになったことがある。実際、耳飾りのデザインは日本版と韓国版で異なっている。今回、映画を観に来た観客はどう思うのだろうか。

日本版(左)と韓国版の耳飾り(いずれも『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』予告編より)

 仲良しの友達と一緒に映画館を訪れた高校3年の女の子は、「そんなの関係ない!」と答えた。

「私の周りでは誰もそんなの気にしていない。ちゃんと映画は映画として受け止めているよ」

 ちなみにこの女子高生たちは、クリアファイル や声優たちのメッセージ映像といった特典をお目当てに、試写会を観に来たという。