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2021/02/01

source : 文春文庫

genre : ニュース, 社会, 政治, 経済, 読書

 長年、政治資金規正法は抜け穴だらけのザル法と呼ばれてきた。近年、それを厳格に運用しようとする機運が高まってきた。その背景には、賄賂の見返りに行政をゆがめてきた贈収賄事件の摘発が容易に進まず、政治とカネをめぐる国会議員の疑惑が絶えないことによる捜査当局のジレンマがある。

 終戦後間もない1948年7月に施行された政治資金規正法の違反は、単なる記載ミスの形式犯とされ、仮に罪に問われても政治家たちはたいてい修正申告で済ませてきた。そのザル法が機能するように改められるようになるのはバブル経済が崩壊したあとのことだ。92年12月から07年12月まで、実に法改正は28回にのぼる。そうして「国民の監視下に置かれた公明正大な政治資金の運用」という法の精神に基づき、取り締まりやすくしていった。

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 換言すれば、かつてのザル法の厳格化は、捜査能力の低下が招いた結果と見ることもできる。とりわけ、特捜部はなかなか実力国会議員を贈収賄の摘発できない。検察側からすると、それだけ錬金術が発達し、政治家も巧妙になって摘発が容易でなくなったという言い訳も成り立つ。いずれも間違いではないだろう。ただし裏献金はもとより、収支報告書に則った表のそれでも、政治献金の性質にあまり違いはない。多くは、なんらかの見返りを期待し、金銭を献上する。程度のちがいこそあれ、それが実態であり、そこに汚職事件が絶えない土壌がある。そんな汚れた日本の政治土壌に、長年必要とされ続けてきたのがゼネコンマネーだ。綺麗ごとではなく、政治にはカネがかかるという。ゼネコンマネーがそれを支えてきた。

政治団体と不動産取引を駆使した蓄財

 焦点の小沢一郎は、数いる実力国会議員のなかでも、抜群の集金力を誇ってきた。おまけにその資産形成に対する熱の入れようは、類を見ない。はからずも、それを証明したのが、小沢事務所の不動産取引である。小沢は政治資金管理団体「陸山会」をはじめ、政治団体を駆使し、住宅用地やビル、マンションを買いあさってきた。沖縄・普天間基地の移設候補地の近くに土地を所有し、話題にもなった。

 政治団体には法人格がない。そのため、政治団体が購入したといいながら、不動産の名義人は、代表の小沢一郎になっている。まるで政治資金による資産形成だ。資産が個人の名義になっている疑義に対し、小沢は不動産を購入する際、あらかじめ個人の所有ではなく実態は政治団体の取引だという確認書を交わしていたと弁明した。だが、その確認書も、不動産を購入した後のあと付け書類だったことが発覚し、非難を浴びる。

 そんな折、飛び出したのが、陸山会による東京・世田谷の宅地購入である。くだんの土地購入における資金操作がいかにも怪しい。

 小沢事務所では04年9月、秘書の寮を建設するという名目で、土地の購入計画を立てた。世田谷区内には小沢の東京宅があり、秘書の寮を建てるなら、自宅に近いほうがいい。そうして秘書たちが土地を物色し、小沢宅から700メートルという至近距離にある空き地を見つけた。その土地を発見したのが、会計責任者で公設第一秘書だった大久保隆規だ。小沢はすぐさま土地の購入を決めた。