ダサいものとカッコいいものは表裏一体
「ス・ト・リ・ッ・パ・ー *2」(1981年)については、どこか場末感のある世界をつくりたいというのがスタッフのなかにあって、まず作詞家の三浦徳子(よしこ)さんと詩の打ち合わせをしました。
*2 引用歌詞 シングル「ス・ト・リ・ッ・パー」(作詞・三浦徳子)1981年9月、ポリドール/アルバム『S/T/R/I/P/P/E/R』(1981年6月)よりシングルカット
たとえとして「ストリッパーのような場末感のある退廃的なアルバム、曲をつくりたいんです」と言ったら、三浦さんが即座に「タイトルは“ストリッパー”がいいんじゃない」と。
そのころはストリッパーというと、ちょっと寂れた下町の、うらぶれたダサいイメージだったので、沢田研二とは今ひとつ結びつかなかったんですよね。
もともと沢田さんがつくったロカビリーっぽいメロディに三浦さんが詩を書いてくれました。
最初にできた詩は「私はストリッパーよ」みたいな感じで、あまりにリアル過ぎてどうなのかなと思いました。でも、考えていくうち、「ストリッパーは裸になる」というイメージを言葉の比喩として表現すればいいんだと思いついて、何も隠さないことで愛は深まるというコンセプトに切り替えたんです。
でき上がった「♪愛はストリッパー」と言い切る三浦さんの詩は、パワーにあふれていました。
伊藤銀次さんがアレンジをして、そのとき結成したエキゾティクスというバンドでロンドンでレコーディングしたら、ニューロカビリーな感じでおしゃれでカッコいいサウンドに仕上がったんです。
世間的にはカッコ悪い印象しかなかった「ストリッパー」という単語でしたが、アルバムのなかから「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」はシングルになり、アルバムのタイトルも自信を持って『S/T/R/I/P/P/E/R』にしました。
詩、サウンド、衣装、振り付け、そして本人の歌唱とすべてが合わさって、新しいパワフルな作品が完成したんです。この曲がヒットしたころには、最初の打ち合わせのときに感じていたうらぶれ感なんかは一切なくなっていましたね。それどころか「ストリッパー」という言葉が、すごくカッコいいものになった。沢田研二のアーティスト・パワーで、今までの言葉のイメージをあっという間に覆してしまったんです。
ダサいものとカッコいいものって、裏表一体みたいなところがあると思います。ダサいと思われるものには、みんなの心のなかの触れて欲しくない本音の部分があるのかもしれません。
それがカッコよさというオブラートに包まれて表現されていると、気づかずに本音を受け入れてしまうんでしょうね。ダサさとカッコよさが二面性として機能すると広がるというか、より多くの人を包み込むことができるんだと、僕はそのとき感じました。