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具体的に伝えない

 なかなかできるようにはならなくて、40歳を過ぎたぐらいから徐々にやり方が変わっていきました。

 昔は「メロディ、このほうがいいんじゃないの」とか「詩、こういうふうにしたいな」とか具体的に言っていたことを、あまり言わないようにしたんです。僕がこれまでいろんな人と仕事をしてきたなかで得た守ったほうがいいこと―メロディや詩をつくるときの原則的なこととか、ギャップがあるほうがおもしろいとか、ヒット曲を出した経験なんかは伝えて、それを枠として捉えてもらって、あとはそのなかで自由に遊んでもらえればいいのかな、と思うようになりました。

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 歌詞は、僕の言葉と若い人の言葉は違うから、自分たちでいいなと思う言葉で歌ったほうがいいんですよね。でも大枠として、詩とは何かということは教えてあげたいんです。詩というのは、心で思ったことを絵が見えるように伝えるもの。だから「悲しい」とか「寂しい」といった言葉を使うんじゃなく、悲しいときにどんな気持ちだったとか、周りがどんなふうに見えていたとか、ものとか絵とかそういうものに置き換えたほうがいいよって。そんな話は最初にするようにしています。

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 曲づくりの自分なりの法則もたくさんあるので、それも必要に応じて少しずつ説明したりしています。

丸く歌わなきゃ

 歌に関しても、歌い方を共有したら、あとは自由にやってもらいます。まず伝えるのは、なにしろ歌は丸く歌わなきゃダメだよっていうことです。尖ってはいけない、角ばってはダメ、丸くないと聴く人の心の柔らかいところに入っていけないから。

 それを難なく理解できる人もいれば、わからない人もいるんです。持って生まれたセンスによるところも大きいから仕方のないことなんだけど、理解が難しい人には僕が何度も歌ってみせたりします。