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 ヒットするかどうかということなんて、つくっているときには考えられないけど、毎回ヒットするために考えうる最善を尽くして作品をつくっています。こうすればヒットするはずだと考えられる知識、技術を駆使して僕は音楽を制作しています。

 かつてイチロー選手も言っていました。「ヒットを打てるかどうかなんてわからないけど、毎回ヒットを打つと思って打席に立っている」と。それは「あそこでヒットを打てると思っていましたか?」という記者の質問に答えてのことでしたけど、そういう質問はものをつくったことのない人の発想なんでしょうね。

その時代のメインストリームを捉える

 僕も「『勝手にしやがれ』は売れると思っていましたか」と聞かれたことがあります。思っていなかったとも言えるし、思っていたとも言えます。つくる前提としては、全部の曲をヒットさせるつもりでいるからです。

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 でも、売れるかどうかなんて、本当にわからないですよね。ヒット曲の法則を見つけたいと思って、今日まで研究しながら制作してきましたけど、ヒットする確率をより高くしようと努力を続けるしかないと思っています。

©iStock.com

 ただ、その時代時代のヒットゾーンというのは確かにあるんです。ポップミュージックのメインストリームはヒットチャート上に必ず見えていて、まずはそのど真ん中にいるアーティストを把握することが大事。そこと比較して、自分がプロデュースするアーティストの今の立ち位置がどこなのかを確認してから、やっぱりメインストリームの先を行くつもりで制作に入ります。

 ヒットに繋がると思えることは、とことん分析したいんですよね、歌い方ひとつにしても。それでうまくいかなければ、また分析してやり直すだけです。その繰り返しですね。

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