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《池脇千鶴が変貌》「逃げ恥」を観て「悲しくなった」人がハマる「その女、ジルバ」の“リアルすぎる女たち”

2021/01/30

 新が飛び込んだ超熟女バー「OLD JACK&ROSE」で出会ったのは、くじらママ(草笛光子・87)、チーママ(中尾ミエ・74 ※1月30日より登場)、ひなぎく(草村礼子・80)、エリー(中田喜子・67)、ナマコ(久本雅美・62)、マスター(品川徹・85)といった人生の達人たちだ。

左からナマコ(久本雅美・62)、ひなぎく(草村礼子・80)、エリー(中田喜子・67) (「その女、ジルバ」公式サイトより)

熟女バー「OLD JACK&ROSE」その居心地の良さ

 40歳でありながら最年少ホステスである新は、お客さんたちに「ギャル」「小娘」「ピチピチ」と声をかけられる。そのうえ「お嬢ちゃん、うちはロリコンクラブじゃねえんだ」なんて言われることもある。そこで新は40歳という年齢が、「まだまだ若い」ということに気が付くのだ。

ホステスとして働く新(「その女、ジルバ」公式サイトより)

 「OLD JACK&ROSE」の居心地が良いのは、若者扱いしてくれるからだけじゃない。

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 ここの集っているのは、伝説のママ・ジルバ(池脇が1人2役)が連れてきた「行き場のなかった女たち」ばかり。彼女らは人の痛みをよく知っているからこそ、優しく明るく、とんでもなくパワフルだ。

 この店で先輩ホステスやお客さんと交流していくうち、新の顔がみるみる明るく可愛くなっていく。人生に絶望していたのに、ダンスを学び始め、挑戦することの喜びを思い出していく。

超熟女バーのホステスはダンスの習得が必須(「その女、ジルバ」公式サイトより)

 ここでも池脇の演技が光っている。「前向きになること」「笑顔でいること」「口角を上げること」で人はこうも変わるのかというところを、少し浮足立った歩みや、すっと伸びた背筋、自然な笑顔で見事に表現している。

「姥捨て」倉庫で働く女たちの立場

 そして、「その女、ジルバ」は「姥捨て」と呼ばれる倉庫で働く人々も掬い上げる。

 新や同僚の村木みか(真飛聖・44)は、本社からの出向で倉庫へ配属された。2人にとって、倉庫での仕事は「意図せぬ異動」であり「生きるために嫌々やる仕事」だ。しかし一方で、「姥捨て」には、やりがいを持って働く人々もいる。それが倉庫で長年働くチームリーダー・浜田スミレ(江口のりこ・40)だ。

新とともに倉庫で働く浜田スミレ(江口のりこ・40)、村木みか(真飛聖・44) (「その女、ジルバ」公式サイトより)

 スミレは倉庫勤務になって不満を抱くみかに対してこう言ってのける。

「(村木は)大学国立だし、百貨店じゃエリートコース。やる気なくなるのも無理ない。あたしみたいなヤンキー上がりとは違うし。でもあたしは、自力でここの社員になって、嬉しかった。だから頑張らないと」

 社会は重層的だ。つい現状に不満ばかりを抱きがちだが、どの場所にいても、何の仕事をしても、そこに誇りを持って一生懸命に生きている人がいること。そして、働けているだけでも幸せで、ありがたいのだということ。スミレの言葉はそんな大切なことを気付かせてくれる。

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