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中曽根の指示で自民党幹部がワシントンDCへ

 また、「ロッキードに有利な取引はニクソン大統領と田中前首相の間で結論が出ていた」との疑惑にも言及したという。

 これは、72年9月、ハワイで行われた日米首脳会談において、ニクソンと角栄が、トライスターまたはP−3Cについて話し合いがあったと暗に匂わせている。両国のトップによる決定を蒸し返すなとでも言いたかったのだろうか。

 さらに11日朝には、幹事長の中曽根の指示で、自民党幹部の佐藤文生がワシントンDCに行き、東アジア・太平洋担当の国務次官補フィリップ・ハビブと面談している。

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©文藝春秋

 佐藤は、日本政府高官の名前に関する議論に触れ、「自民党は自らの立場を守らなければならない」と述べたと公文書に記録されている。

 在日米大使館内でも、灰色高官の候補についての分析が行われ、中曽根は現職の党幹部の中で「もっとも脆弱に見える」とされ、「ワシントンで具体的な情報が明るみに出れば辞任となる可能性がある」と同じく公文書に記録されている。

中曽根は誰に伝言を依頼したのか

 奥山は、さらに不可解なものを発見している。機密として文字が伏せられた箇所があったのだ。

《前後の文脈からすると、そこには、中曽根と会話した相手の名前や役職が記載されている可能性がある。

 秘密を解除できない理由は「国家安全保障上の制約」。白抜きにされたのは2007年7月23日。この公電のその他の部分の秘密解除についてCIAの承認が下りたのと同じ日なので、CIAの都合で秘密とされているのではないかと推測できるが、実際のところは分からない》

 中曽根は、誰と接触したのだろうか。

©文藝春秋

 相手が大使なら、わざわざ名を伏せる必要はなかっただろう。もしも、相手がCIAだったとすると、中曽根との繋がりが気になる。

 そして、中曽根と関係が深いと取り沙汰されていた児玉誉士夫は、CIAとのパイプがあった。

 中曽根の必死のもみ消し作戦は、中曽根がロッキード事件に深く関与していたことを、自ら喧伝するようなものだ。

 いずれにしても、米国からもたらされた情報によって、角栄は逮捕された。中曽根のもみ消し作戦は、失敗だったのか。

 いや、自身が罪に問われなかったという意味では、成功だったのか。