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 ただ今回ドラマを観る限りでは、2人はお互いに自分の価値観をしっかり持っていて、同じ目線で言い合える良好な関係性を築いているよう。母が娘のことを「君」と呼ぶところも個人としての尊重を感じます。

恋愛小説の女王の母とオタクの娘の価値観の違い

右:浜辺美波。©文藝春秋

 2人の価値観の違いは特に恋愛において顕著にあらわれています。恋愛小説家の母は、第1話冒頭で「恋愛」についてこう語っていました。「恋愛って刀を持つことだと思うんです。男と女の真剣勝負。きっと人をどこまで切っていいかって恋愛で学ぶの。刀を刀を持たねば血が出る頃合いも分からず、傷の直し方もわからない」「今の子って恋愛しないじゃないですか」「恋をすることでしか成長できない部分があると思うんです」「恋い焦がれる気持ちを知らないなんてこの世に生まれてきて不幸じゃないですか?」。

 しっかりポージングを取りながら記者に朗々と語る姿は、彼女が恋愛小説の女王と呼ばれていた事実をしっかりと描写してくれています。しかも、その恋愛観の古さから、昔は一斉風靡したが最近は鳴かず飛ばずの存在であることがひしひしと伝わってきます。

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 一方娘は、ビックサイトでエロい漫画を山程買う筋金入りの漫画オタクの大学生。恋愛にかまけている暇がなく、漫画の新刊を買い漁ったり、コミケに向けてコスプレの準備をしたりと忙しい日々を送っている。母からもずっと未婚のまま実家暮らしをする「子ども部屋おばさん」になるのではないかと心配されているけど、それ以上に「いい歳して天然で、時に暴走する世間知らずな母」を心配して放っておけない。母が恋愛テクニックを教示する際、「かわいそうに、こんなことをしてモテてきたのか」とばっさりと母を否定しているところは頼もしい限りです。

 当たり前だけど、母と娘は別人格の別の人間。20歳以上離れていて世代が違うのだから、それも当然ですよね。

 ここからも、事前情報にあった碧の恋愛観だけで時代錯誤な脚本のドラマと認識するのは間違いだとわかります。それらは主人公の作家性を際立たせるため“あえて”使われている設定にすぎず、脚本自体はちゃんと時代を反映して制作されているのでご安心を。